Kazu

ファウダ −報復の連鎖− シーズン1のKazuのレビュー・感想・評価

4.5
長年観たかったドラマ。パレスチナ西岸地区のイスラエル国防軍(IDF)や総保安庁(シンベト、シャバック)の対テロ対策チームの作戦と人間関係を中心に描くアクション・ヒューマンドラマ。イスラエル中党左派の視点で、イスラエル側、パレスチナ側双方の心理や作戦を非常に丁寧に描いている。仕事でパレスチナにここ数年出入りしているが、製作・脚本のLior Raz(主演でもある)とAvi IssacharoffのIDFにおける実体験がふんだんに活かされているからか、低予算ながらそのディテールのレベルの高さは驚くべきだ。GWにシーズン3まで一気観してしまった。
イスラエル側は国防軍の対テロ作戦の情報収集、尋問、作戦起案、実行の様子が新鮮だった。いつもどこどこで急襲があった、1人負傷したなどのニュース(パレスチナでは毎日のことなので海外ではニュースにもほとんどならない)の裏側で起きていることの勉強になった。
イスラエル側の家庭とのバランスに悩む描写と、パレスチナ側で組織のメンツの中での立ち位置・ヤクザの義理人情の世界は違っているようでいて、戦いたいわけではないのに復讐の連鎖を起こしてしまう、同じ人間の心理を浮かび上がらせているように思う。
ミズラヒ・マグレブのユダヤ人はパレスチナ人と見た目はほぼ同じだが(ムスリムと仲良く暮らしていた時代ももちろんある)、冷徹にパレスチナ側を恐喝・急襲・殺害する点は人間の悲しい現状。
普段我々が観ているハリウッド映画などはアメリカのユダヤ人の影響を必ず受けており、本作のような描写はありえないだろう。それがないリアルなイスラエル・パレスチナ関係を、スリラーやドラマとしてのエンターテインメント性も妥協せずに(その分当然フィクションの部分も多いとは思う)作り上げた本作の社会的な意義は大きいと思う。
シーズン1はシリンという女性医師を起点にしておこる複雑な心理描写があって個人的に一番好きです。
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