ninajackson

ザ・ナイト・オブ/ナイト・オブ・キリング 失われた記憶のninajacksonのレビュー・感想・評価

4.3
他人から見るとどう見ても主人公が殺したというシチュエーションで殺人事件が起こってしまい、冤罪なのに刑務所に入ってしまった青年ナズと冤罪を晴らそうとするオジサン弁護士ジョンの話。
というとどこにでもありそうな話のようだがこのドラマのポイントは「正義をもって冤罪を晴らす」ではない。むしろ逆。
「この世には真実も正義も血も涙もない」である。

気弱で真面目な青年ナズが刑務所に入れられたことで浮世からコテンパンに打ちのめされ、希望など無いのだと何度も絶望する。
彼は刑務所で生き残るために別人のように、それこそ刑務所に入ってから犯罪者になっていくのである。
ナズの体型と顔つきが回を追うごとにどんどん変わっていく。そこで生きるために変わらざるを得ないのである。
彼の弁護士は、弁護士なのに司法に期待せず最初はただ金を稼いで生きるためだけに弁護士業をちまちまこなす小汚いやさぐれたおじさん。これがまたかつて見たことないほどの強烈なキャラで汚さや情けなさ、飾り気の無さ、プライドの無さ、孤独感、全部含めてなんとも言えず愛おしい。

この2人で陪審員を含めたアメリカの法廷に立ち向かう。
最初から最後まで暗く重い空気だが、だからこそラストの最終弁論のシーンが光り、何度も見たくなる。

しかし最初に言ったように「この世には真実も正義も血も涙もない」なドラマである。
殺人事件の真犯人が誰だったか、ということよりも「真実など誰も見ようとはしない」ということの恐ろしさにフォーカスが当たっている。


おススメ。
ninajackson

ninajackson