「007」シリーズの原作者、イアン・フレミングが1作目「カジノ・ロワイヤル」に着手した頃までの物語。
彼が中々面白い人生を送ったこと、スパイ的な仕事をしていたことは知っていたが、本当にこんな?と疑ってしまうほど、「007」な生活を送っていたらしい。一応映像には「この作品は極力歴史に忠実に作った」と表示される。
4話だけのミニシリーズなので一気に観れてしまうが、さてこれは面白いのか、と言うとなかなか難しい。惹きつけられながら一気に観ることができるほどには面白いのだが、何かが引っかかる。
映像は綺麗で、今風にカッコ良い。編集もリズムが良い。俳優たちも悪くない…、そう、悪くない。なのに、だ。
このシリーズ、「007」ファンじゃない人が観たらどう思うのか疑問。それがすごく知りたい。
———— 007ファンの戯言
微妙に感じた理由のひとつが、フレミングになかなか感情移入しにくいということ。上流階級の出身(メイフェア生まれらしい、つまり金持ち)で、コンプレックスの塊(兄との確執)。女好きで酒好き。感じも悪いし、言ったらハンサムでもない。しかしモテる。これに感情移入するとしたらそれぞれの要素が圧倒的で、まるで映画のキャラクター…。ジェームズ・ボンドではプラスに作用するこれらの点が、イアン・フレミングにはマイナスに作用している気がする。
そしてもうひとつが、「007」シリーズに中途半端に寄せてきている点。BGMやシャドーを活かした映像がダニエル・クレイグの「007」シリーズに似ている。そうしてしまったが為に、しっかり作り込んでいて全体的に悪くないのに、なんとなく「偽物」感が出てしまっている。フレミングを主役にしている以上、多少雰囲気が似ている、といったことは仕方がないが、進んで寄せていっているのが少々残念。
Art imitates life / life imitates art とは良く言ったもので、イアン・フレミングがなりたかった完成形の自分 = ジェームズ・ボンド(007)、という事らしい。それはスパイでありながら事務仕事の多いフレミングの現場に出たい、分かりやすく活躍したい、という欲求がベースになっているように描かれている。
全体として決して悪くない。