えむ

アガサ・クリスティー 無実はさいなむのえむのレビュー・感想・評価

3.6
多くの養子を迎えた資産家の家族の母親が殺された。

その犯人は素行の悪い養子の1人で、彼は捕まった後、刑務所で喧嘩騒ぎを起こして亡くなり、ようやく落ち着きを取り戻したところで父親は新しい妻を迎えようとしている。

そんな折、捕まった養子のアリバイを証明できると言う男が現れるのだが、もし彼が無実なら他の誰かが犯人ということになってしまう…


連ドラ3話なので、最初こそ、ダラダラと人物像に時間をかけすぎで、飽きる人がいるんじゃないかと思ったものの、そこを越したら大丈夫。

物事が動き始めてからは、ストーリーが進むにつれ、過去の場面がフラッシュバックのように映し出されたり、ひとりひとりの曰くありげな表情が垣間見えたり、ハッキリとした描かれ方というよりは『匂わせる』ような演出が多くて、全員が何かを隠しているような怪しさといびつさに満ちて、その後の展開に引き付けられる作りになってます。

誰一人幸せそうには見えない、お互いに腹のうちを見せない、どこか陰鬱な雰囲気に気持ちを煽られながら、クリスティ自身も自作の上位にあげている、この上質ミステリーを楽しんでください。


ミステリーはネタバレなしでないと面白くないので、内容については多くは書かないけど、これはクリスティといっても、マープルやポアロのように探偵役が出てくる話では無いのと、原作を知っている人には全てが原作通りって訳じゃないですよ、ということだけお伝えしておきます。


実にクセのある、いや〜な感じの人続出の家族なので、そこだけは覚悟しといて。笑
えむ

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