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Channel ZERO: キャンドル・コーヴのEikeのレビュー・感想・評価

3.1
80年代半ば頃からHBOを筆頭としたケーブルテレビが普及したことでTVドラマの質が大きく変化したアメリカ。
現在、さらなる変革期を迎えつつあるような気がいたします。
それはもちろんインターネットの進歩のおかげ。
NetflixやHulu、さらにはAmazon等がオリジナルコンテンツの制作に乗り出し、ドラマの試聴形態も大きく変わろうとしているようです。
提供されるコンテンツの流通経路が増えるにしたがってドラマの内容に関しても細分化が進んでいるようですがこれまでのネットワークTVドラマとは違ったジャンルドラマも増えてきています。
その象徴的な例が「ホラードラマ」の普及。
もちろん以前からホラーテイストを売りにした作品は幾つもありましたがその多くはミステリーやSFといったジャンルの要素としての扱いがほとんどでした。
X-Filesなどがその典型例ですかね。
ところがここ数年そのものずばり、ホラーであることを前面に打ち出したドラマが次々に登場してきております。
その最たる例はやはりケーブル局AMC制作の「ウォーキング・デッド」でしょう。
生ける屍が支配する世界で繰り広げられる血と暴力の物語がこれほどまでに人気を博すとはだれも予想してなかったのではないでしょうか。
通常のネットワークでは到底放送できない過激な表現が可能となったことで本格ホラードラマの制作体制が格段に整ってきた気配があります。

本作はSFジャンルの専門局、Syfyのオリジナルドラマ。
Syfyと言えば日本ではおバカな鮫映画で知られていますが本作はどシリアスな本格ホラーとなっております。

小児精神科医のマイク・ペインターは自身の少年期の悲劇の精神的後遺症に長年苦しめられています。
その苦しみを乗り越えるべく、決心した彼は故郷の町、アイアン・ヒルに帰還。
疎遠となっていた母や古い友人たちと再会を果たしますが時を同じくしてその街にかつての悪夢がよみがえる…。

昔日、彼の行方不明となった双子の兄と4人の子供たちを惨殺したのは何者なのか?
なぜ殺害された子供たちの歯が抜かれていたのか?
当時、TVで放映されていた謎の人形劇"Candle Cove"とこの惨劇との関連とは果たして。。。。
とまぁ、ミステリ色も濃厚。
序盤の展開はサイコサスペンス調ですが至って飾り気のないアプローチ。
舞台となるのも特にこれといった特徴もない片田舎の町であります。
しかし、なかなかに気色悪い感じがきちんと出ていてホラーファンなら楽しめるものになっています。

子供たちの間でしか記憶が共有されていないテレビ人形劇Candle Coveの薄気味悪さ、フラッシュバックで蘇る幼き日の惨劇。
意外と抑えた印象だな…と思っていたら中盤にはちゃんと流血も出てきました。
しかし先にじっくりドラマのトーンを固めた上でのショック描写なのでドラマ自体への求心力が損なわれない様にしてあるのは上手い。
オカルト・超自然的な展開自体はホラーとしては間違いではないが意外と緊迫感を途切れないようにするのは難しい。

実際、本作は「本格ホラー」なのでお話し自体を理詰めでとらえようとするとどうしても「???」となる点も多い。
ただ、役者の演技もシリアスなアプローチを崩していないので意外と白けることはありませんでした。
こういう趣味性の高い、でも本格的なホラードラマが作れるというのは素直に羨ましい。
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