Oto

東京ラブストーリーのOtoのレビュー・感想・評価

東京ラブストーリー(1991年製作のドラマ)
3.5
もし作家を知らずに観て『花束〜』や『大豆田〜』を書いている人の作品と言われてもとても信じられなかったと思う。原作ものだし坂元さんも当時は不本意だったらしいけど、作家性って時間をかけて熟成していくものなんだなぁというか、やっぱり誰しもスタートはお題に応えて人に伝わるものを作るというところにあるんだなと学んだ。社会的に恵まれていると思われているけど生きづらさを抱えた人たちの物語と考えると繋がるところはあるかも。

トレンディドラマというものを初めて観たけど、演出がコテコテすぎて何度も大笑いした。「千鳥のハッピーチャンネル」で大悟さんがやってたパロディがあながち誇張ではないことを知った。
電話のフリとか振り返りを3回繰り返すショットとか明転とか、最も演出めいた演出で、このような作品群をパイオニアとして、いわゆるドラマ芝居みたいなものが生まれていったのか…。

赤名リカがどうしてこんなに魅力的なのかを考えたときに、ワガママ×健気という少し遠い性格同士の掛け合わせにあるような気がする。真っ直ぐで強く見えるけど、決定的に孤独で報われない。
むしろその場凌ぎで自分に都合のいい選択を続けるカンチに全く魅力を感じなくなっていったので、最後の選択に関しては素晴らしいと思ったものの、リカの言葉以外にもなにか彼女の将来への希望を表すような何かを映してほしかったというか。リカに報われてほしいという想いが強い一方で、彼女の幸せを疑ってしまう自分がいた。自分に近い部分があるだけに。

自分を構成してくれる過去の別れや現在の孤独も受け入れながら生きていくのか、それとも自分らしさを多少犠牲にしてでも報われない恋愛を続けることを選ぶのか、どちらが正解なのかわからないし、愛されることを幸せとするのか愛することを幸せとするのか、自己実現を成功とするのか他者に貢献できることを成功とするのかは、その人が決めることなんだけど、彼女の一途な気持ちが日の目を浴びなかった寂しさなのかなー。勤続か転職かの選択にも同じものがあるけど、その選択の先にプラスがあるかマイナスがあるかわからないし、そもそもみんながよしとするものからの解放に彼女の強さがあるんだけど、それができた彼女なら大丈夫だろうって応援するしかないという摂理。

さとみに対しては、当時の視聴者と同じように対して苛立ちが募っていったんだけど、人の好意を利用して自分に都合のいい行動を選ぶ人は信頼を得られないということか。優柔不断で思わせぶりで、誰かに流されて生きているのに、いざというときに責任をとらず他人に決定的に迷惑をかけるいう嫌さ。逆に恋を成就させたいときには、相手のことを想って譲ったり遠慮したりしてないで、強引にでも自分の足を運ぶ必要があることを学んだ。

良いドラマは4人だと聞いたことがある。長崎の存在が絡んではくるものの、基本的には、カンチとリカ、三上とさとみ、という関係性が揺らぐというのをずっと繰り返していた。ずっと変わらない気持ちを持っていたのがリカだけだという悲しさがあったけど、人間ってそんなもんだし、変わることを受け入れた方が楽なのかもしれないけど、フラットな視聴者として見たときにどうしても何かを追いかけ続ける人間を無責任に応援したくなってしまうのはなんなんだろう…その対象が『コントが始まる』の夢であっても同じだけど、それまでの努力に見合う結果を手に入れてほしいと思うんだろうね、過程が楽しければ別にいいのに。
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