けんざ

マインドハンター シーズン1のけんざのレビュー・感想・評価

マインドハンター シーズン1(2017年製作のドラマ)
4.3
個人的に刑事ドラマが好きじゃないのもあって、普段なら観もしなかっただろう。しかし敬愛するデヴィッド・フィンチャーが総監督を務めたということで、流石にチェックしておこうという使命感のもと観始めた。結果的に1日で全話観終わるほどには面白かったので、その選択は間違っていなかったと言える。

例の如く、不穏な音楽とメッセージ性の強い映像が挿し込まれたオープニングクレジット。1話目を観終わったときに、予想していた展開とは違う印象を受けたので少し違和感を覚えた。というのも、猟奇的殺人犯を扱う話は犯人の残虐性を前面に押し出して盛り上げようとするものだと思っていたのが、あくまで犯罪心理学から導かれるプロファイリングの過程を淡々と描写するだけの内容だったからだ。しかし特に激しい暴力描写やグロテスクな造形を見せられるわけでもないのに背筋が凍る瞬間があって、これはやっぱりフィンチャーにしかできない緻密な映像設計の賜物なんだと思う。

プロファイリングの革新性だけではなく危険性も強調していたのは重要なポイントだと感じた。犯罪への対応策として、事後処理に徹するよりも予防の方が望ましいのは言うまでもない。しかしその予見性が暴走してしまうリスクを考慮すると、「疑わしきは罰せず」理論に則って一切の予防ができないというジレンマに陥ってしまうのだ。科学捜査が発達した現代ならまだしも、捜査にポリグラフを用いている70年代であれば尚更のことだろう(現代なら現代で人権問題とかコンプラに敏感だし)。大学で刑事学を履修した際にも同じような話を聞いていたので、ここは非常に興味を唆られた部分だった。刑事ドラマだとよくある展開なんだろうか。

本編は後味の悪いラストシーン(そこも好きなんだけど)で終わりはするが、各所に緊張を緩和させるカットがあるのも良かった。「童貞が2種類のドーナツを用意するか?」っていうセリフ、プロファイリングの一環だとしても無茶苦茶さを感じてクスッと笑える。あと、補助金を勝ち取ってエレベーターに乗ったフォードたち3人の口角が徐々に緩んでいくシーンが凄く好き。3人とも方向性が少しずつ違ってて、一緒に行動しつつもビジネスライクな関係性が明確だったからこそ、あのシーンはとてもハートウォーミングだった。

1つ気になったのは、毎話冒頭に挿し込まれているサイコパスがラスボスではなかったこと。最後の行為は何を意味していたんだろうか。シーズン2で再登場するのかな。すぐ観ます。
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