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マンダロリアン シーズン2のTenKasSのレビュー・感想・評価

マンダロリアン シーズン2(2020年製作のドラマ)
5.0
[1話]
俺、こういうのがみたかったんだ…。
日本のディズニーマイナスやルーカスフィルムの本丸、特にスターウォーズ最大のヴィラン、キャスリーン・ケネディとの闘いは終わったわけではないが、「マンダロリアン」は本当に素晴らしい。スターウォーズ世界を代表する蛮族と思われてきたタスケンたちのマスクの奥と束の間の和解。
アスペクト比が変わる瞬間、家が劇場化した。

[2話]
監督がペイトン・リード。
今は苦難の時代だ。恐らく現代のアメリカ人には横暴を働く警察と新共和国軍とが重なる展開なのだろう。そこから1話に引き続き描かれる和解が良い。X-ウイングパイロットがデイヴ・フィローニで笑ってしまった。

[3話]
監督がブライス・ダラス・ハワード。明らかに父親よりスターウォーズを撮るのが上手い。
人間がいない港の風景に超感動。船が海に落ちたらウォーカーについたクレーンで引き揚げるところまで見せてくれるのが嬉しい。
ファンサービス多めでボ=カターン・クライズが遂に?実写化。本国の声優さんがそのまま演じているらしいのだがこんなに似るものなのか…。
帝国によって分断させられたマンダロア。マンダロリアンたちにも多数の派閥が存在することも示唆される。マンダロリアンは分断した人々を再び結びつける話になるのか…??
こう掘り下げて欲しいところが多いから同様に「ローグワン」の反乱軍の派閥についても映画一本で片付けてほしくなかったなぁ…。キャシアン・アンドーのドラマがその補完になってくれるといいな。
アソーカ・タノの名前が出て歓喜。個人的に「クローンウォーズ」は特別好きでもないと思っていたけど「反乱者たち」も含め既に12年間もアソーカ・タノとファンの付き合いはあるわけで…。初めはシリーズもアソーカも受け入れにくかったけど完結した今立派な「クローンウォーズ」ファンになっている自分に気づく。

[4話]
カール・ウェザースが監督のクレジットにいて驚く。
レイザークレストがぶっ壊れたのでシーズン1の人たちと合流。キャラ・デューンはやっぱ最高。
スターウォーズの銀河に住む人たちはどういう暮らしをしているのかを見たい(読みたいのではない)という欲求を凄く満たしてくれる。プロトコルドロイドが子供に授業をしている光景が素晴らしい。字幕に出てくる深核部はディープコア、中縁部はミッドリム、内縁部はインナーリム、植民地域はコロニーズ、中核部はコアリージョン…ってルビ振ってくれれば良かったのに!というキモいオタクとしてのむず痒さはあったけどこういう光景が実写で見られるのは良いね。
キャラ・デューンの出身惑星がオルデランだった。ということはマンドーはSBDに親を殺され、キャラはデススターに全部消しとばされたのね…。こういう連関のさせ方がスピンオフらしさというか銀河に対する想像力を広げていく。(マンダロリアンみてるかJJ!)
スピーダーバイクが崖を降りてゆく映像が気持ち良すぎるのと、マンドーが3点着地決めたこと、モフギデオンがこの世界でもラボを作っていることと見るところが多すぎる。来週はきっとモフギデオンが店長のファーストフード店が出ます。

[5話]
デイヴ・フィローニがやったぞ…!
「スターウォーズのスピンオフ」ではなく「STARWARS」に今までで最も接近した回。シークェルトリロジーが散々な出来なためヒヤヒヤしてしまったが杞憂だった。そしてデイヴ・フィローニの描くスターウォーズ世界(クローンウォーズと反乱者たち)の直接的な続編でもある。
あれだけ溜めて登場した1話目のボバ・フェットは『フォースの覚醒』のルーク・スカイウォーカーのような扱いだったが、アソーカ・タノは違う。開幕からトレードマークの二刀流でライトセーバー(反乱者たちから続く白い光刃)を霧の中で振るう。霧と光における可視と不可視のアクションが良い。時代劇や武侠映画的なトーンの画面。
アソーカが平然と出てくるということは後々サビーヌ・レンも登場するかもしれない。エンドアの戦いの後、スローン大提督とエズラ・ブリッジャーを探しに二人は出かけたのだから、後々エズラも出る可能性がある。(もしかするとルーク・スカイウォーカーも…?)
今回も和解がテーマでありジェダイとマンダロリアンの融和。そもそもスターウォーズはルーカスが古今東西好きな映画をごちゃ混ぜにした『フラッシュ・ゴードン』なので、今回の同時並行する「時代劇、武侠映画的対決」と「西部劇的対決」はスターウォーズが映画史的に成し遂げた融合の再演にも見える。こういったジャンル的記号や作品内の設定をテーマとうまく絡めている柔軟さは、あまりに窮屈な世界(スターウォーズの過去作からの引用と逆張りと揚げ足取り)しか提示できなかったシークェルの後では、感動を覚えてしまう。これが『シスの復讐』の後に初めて見る実写のスターウォーズ作品だったなら、どんなにファンは幸運だったろう…なんて思わずにいられない。作品内時代が駄作のシークェルに向かっていくと考えるだけで苛立っている。
(そういえばグローグーくんは50歳、アソーカはこの時点で44歳、アナキンは44歳、オビ=ワンは57歳でフォースと一体化。アソーカがアナキンの享年と同い年…。アナキンもオビ=ワンもいない世界で戦うアソーカは何を思っている…?)

[6話]
なんていうかあの…プリクエル世代なので、テムエラ・モリソンがボバ・フェットをやってくれたというそれだけの事実が本当に…嬉しくてなにも他のところ見れませんでした。吹替版もちゃんと金田明夫氏で、金田明夫も本当にクローンの攻撃→シスの復讐→クローンウォーズ→反乱者たちと、降板せずに全てのクローンの声をやってくれて、また今回もちゃんとボバをやってくれて、もはやその声で育ったので感謝しかないです。ありがとうございました。ホントに…。

あ、当たり前だけど帝国軍残党がファーストオーダーの輸送船っぽいのに載っててイラッとしました。それだけです…。

[7話]
思いっきり『恐怖の報酬』(勿論フリードキン版)を下敷きに…。スターウォーズ一作目と『恐怖の報酬』の関係を考えると『スターウォーズ』で『恐怖の報酬』は皮肉なんじゃないの…?
シーズン1に続きリック・ファミュイワという人が監督/脚本を担当した回はどこか引き締まっていないのでガッカリっちゃガッカリ。とはいえこれまでの回が面白すぎただけ。
シンダー作戦という固有名詞が出て焦る。(PS4の「バトルフロント2 」のつまんないシングルプレイヤーモードで映像化されたもので、ジャクーの戦いで幕を閉じる。)
ディズニーが、本編やスピンオフ映画やアニメといった映像作品からばかりでなく、ゲームやコミック、小説(カノン/レジェンズ問わず)からの引用も平然とやる節操のなさはあんまり好きではない。未プレイの「スコードロン」と「フォールンオーダー」もやらなきゃだめか??
あとファーストオーダーを匂わせるセリフが出て若干アレルギー反応が出た。シークェルを乗り越える日はくるのか…?(とはいえこのセリフ自体は「民衆は自由ではなく秩序(オーダー)を求めている。」であり、めちゃくちゃ現代を暗示している…)

たまたま一緒に見ていた弟が、「スレーヴ1が主役側っていう映像は珍しいな」と言っていて、なるほど確かにと思った。

[8話]
5話時点で予想の範疇に入っていたことをその後たった3話で実現してくるのは、ファンサービス過剰だから辞めて欲しかった。スピンオフから乖離してSTARWARSをやろうとしすぎているのでかなり心配。ファンサービス過剰になって失敗した映画をもう少なくとも3本は見てきているから懐疑的になってしまう。物凄く興奮はしたが、スターウォーズ本伝がこれからも重要な役者がいなくても続く(続けられる)というのはどうなんだろうとも思ったし、7〜9をこれでは実質作り直せるかのような方向性。作り直しはしなかろうが、このラストも7〜9があるから良い方には転ばないと分かっている。とはいえ7〜9より圧倒的に面白いのだから歓迎はしたい。
ただなんというか、俺はディープ・フェイクウォーカーさんを本当に見たかったのだろうか…。『ローグワン』や『スカイウォーカーの夜明け』でもこの手法は好きになれなかった。またかと思ってしまっただけかもしれない。

1話だけ満点だった。全体の点数は撤回、保留。

[追記]
結局、ディズニー権利売却後のスターウォーズは、ファンの感情をどう落ち着かせるかという点では一貫している気がする。
プリクェルへの反発
→懐古的なエピソード7

エピソード8への猛反発とハン・ソロの興収苦戦
→ファンサービス過剰すぎて必然性もないエピソード9

シークェルへの反発→マンダロリアンのスターウォーズ本伝へのコネクト、シークェルで見れなかったものをうまく組み込むファンサービス。

と行ったり来たりを繰り返しながらストーリーテリングとファンサービスのバランスを上手く取ろうとしている。そして今回漸くそのバランスを見出したっぽい。
個人的に最終話で諸手を挙げて喜べなかったのは、この方向性を見出すのが遅すぎたから。
映画五本、ドラマシリーズ2シーズンを発表してようやく、ラストのルーク・スカイウォーカーのアクションという多少はストーリー的必然性のあるファンサービスをみることが出来た。だからみんな喜んでいるし、歓迎したい。とはいえここまで感情を弄ばれすぎた。しかも今回のは劇場ではない環境で、マーク・ハミル本人でもない。どこか引っ掛かるのはそこだけ。マンダロリアンの作品自体にはなんの不満もない。ただ数年前、出来る時にできることをやってくれなかった。一観客としてそれが単に悔しかった。

(ルークの見た目がEP6そのままに近いってのも、単なるファンサービス感が拭えなくて違和感だった。5年も経ってるから髪型くらい変わってていいのに…)

2021/1/11
何となく考えを変えた。文句は確かにあるのだけど、それは単なるうるさいファンとしての文句。
重要なことは、これを目撃した子供達が自分と同じようにスターウォーズが好きになり、そして最後のルークはじめ旧作の要素に触れて、昔のものにも興味を持ってくれることただそれだけだ。
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