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スペシャルドラマ 必殺仕事人2019のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

4.0
表と裏の稼業に精を出す小五郎(東山紀之)だが、母・こう(野際陽子)が死に一周忌を迎えたにも関わらず、気分が落ち込み遺品整理すらもままならない妻・ふく(中越典子)のことを案じていた。その様子を見た同僚の住之江彦左衛門が、「同価値のもの同士を交換する橋渡し」を無償で行っている、馬喰町の油問屋・佐島屋の手代・弥吉(伊藤健太郎)を紹介する。弥吉の手配りにより、こうの遺品はすぐに処分され、ふくにも笑顔が戻った。その弥吉の才覚に、豪商・上総屋清右ヱ門(西田敏行)が目を付ける。
リュウ(知念侑李)は須賀醫院で手伝いをしているおたねに惹かれるが、おたねには許嫁がおり、その許嫁こそ弥吉であった。弥吉は、おたねに橋渡しで手に入れた古い櫛を贈る。嬉しそうに髪にさすおたね。おたねの母・おきよは病身だが、弥吉が近々番頭見習いとなり、給金をいただけるようになっておたねと祝言をあげたいという言葉を聞き喜ぶ。
弥吉は取引先である蘇我屋忠兵衛から、上総屋を紹介される。上総屋は、弥吉が行っていることは「献残屋」という立派な商売であること、手間賃を受け取ることで莫大な富を築くことができることを伝え、自分が後ろ盾になっても良いと言う。上総屋は江戸中の大店や金持ちとつながりのある人物で、蘇我屋からも良い話だと勧められるものの、弥吉は「儲けのためにやっているのではない」と断る。
かねてからヤクザ・飛鳥一家から立ち退きの脅しに遭っていた深川長屋だが、ついに飛鳥一家による本格的な打ちこわしが始まった。抵抗する住人を容赦なく斬り殺す飛鳥一家。おたねの母・おきよも兇刃に倒れ息を引き取った。その様子を満足そうに眺めていたのは、弥吉の得意先である蘇我屋だった。蘇我屋が飛鳥一家をつかって長屋の住人を斬殺したことを、本町奉行所へ訴える弥吉とおたね。与力・増村も憤り、配下の同心たちに探索を命じるも、そのすぐ後に増村宛てに書状が届く。それは、「深川長屋一帯の事件に、今後一切奉行所は手を出すな」という上からの圧力だった。
母を殺されたおたねと弥吉の怒りは鎮まらない。そんな二人に、リュウは「三番筋に願をかけると、晴らせぬ恨みを晴らすことができる」と伝える。しかし、それには金が要る。弥吉は、これまで無償で行っていた「献残屋」の稼業で手間賃を貰うことを決意。貯めた金で殺しを依頼する。依頼を受けた小五郎たちは、蘇我屋と飛鳥一家のつながりが書かれた証文を手に入れた後に殺しに臨む。飛鳥一家の権左、杉蔵、鬼松、そして蘇我屋忠兵衛を始末する仕事人。蘇我屋が殺されたことを知り、自分たちが願をかけたことが叶ったことに驚く弥吉とおたね。
弥吉が献残屋で利益を得たことを知った上総屋は、弥吉の才覚と独立心をくすぐる。一ヶ月後、佐島屋から暇をもらい、上総屋の後見を得て「献残屋・まるや」の主となる弥吉。上総屋による「金があれば何でもできる。どんな無理でも通る。それが世の中というものだ」という言葉に触発され野心を高めていく。献残屋の商売が軌道に乗りはじめた弥吉は、奉公していた佐島屋を買い取り、おたねには新しい櫛と25両を贈る。「もっともっと大きくなる」野心を口にする弥吉の姿に、おたねは戸惑いを隠せない。そんな弥吉の前に、佐島屋で番頭だった金次郎が現れた。佐島屋の主・二郎衛門が首を吊ったというのだ。驚きを隠せない弥吉だが、更に驚いたのは、金次郎が弥吉の「付き人」として雇ってほしいと目の前で土下座をしたことだった。
弥吉は上総屋から女性を紹介される。徳川家斉の遠縁にあたる雉子島家のお嬢様・ほのか(松井玲奈)。派手な身なりと奔放な性格とは裏腹に、算術に長け和歌も嗜むのだそう。ほのかも満更ではないようだが、弥吉には許嫁がいることを知り破談となる。面目をつぶされた上総屋は、目利きのミスをでっちあげ弥吉を委縮させる。上総屋の背後には老中・諏訪守忠悦がおり、諏訪守から貰った脇差を弥吉に贈る上総屋は、弥吉に苗字帯刀を許し、今後は「海老沢吉右衛門」と名乗ること、そして蘇我屋が完遂できなかった深川長屋の住人立ち退きと取り壊しを命じる。
深川長屋の住人たちと平和的解決を望む弥吉は、住人に別の住居を与え、生活の面倒をみることを提案。住人たちもその案に同意するが、上総屋が新たに差し向けたヤクザ・神竜一家が長屋の住人のほとんどを斬殺。弥吉は上総屋に抗議するが、上総屋は「それが余計なこと。もっと大きな人物になるため、無駄金を使うな」と諭す。さすがにこの暴挙には、本町奉行所の同心たちも怒り心頭。住之江をはじめ、同心たちは「奉行所として悪人どもをお縄にする」と躍起になる。増村は登城し幕閣へ抗議をすると息巻くも、奉行所から動くことができなかった。しかし、小五郎も堪忍袋の緒が切れ、リュウと涼次と共に上総屋とその背後にいる老中とのつながりを探りはじめる。
深川長屋の生き残りとして神竜一家に命を狙われるおたね。弥吉と落ち合ったおたねは、世を儚んで二人で心中することを決意する。赤い布を手首に巻き、弥吉が脇差でおたねを刺す。刺されたおたねは「ありがとう」と弥吉に漏らし、弥吉も自分の胸を脇差で突いた。しかし、弥吉が差したのは木の板であり、おたねはその姿を見て失意の中、意識を失っていった。これらはすべて上総屋と金次郎の策略だった。
弥吉はほのかと祝言をあげることとなった。一方、須賀連暁に助けられたおたねは一命を取り留めていた。弥吉からもらった25両を手に三番筋へ来たおたねは、弥吉からの贈り物である古い櫛と25両を置き、弥吉たちを殺してくれるよう涙ながらに依頼を行うのだった。
小五郎たち仕事人は、弥吉や上総屋一派を仕掛ける。
今回の敵は、老中と結託して悪の限りを尽くす上総屋。悪辣な地上げをしても、老中との繋がりを忖度されなかったことになる。そんな外道を仕掛ける仕事人は、まさに現代のうさを晴らす痛快さがある。
純真な弥吉が、上総屋に野心を刺激され闇堕ちする展開は、辛い。
現代的な悪役がはまっている西田敏行は、悪辣ぶりでは最近のシリーズでは、一番。
なかなか面白かった。
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