扱っているテーマはヘビーで複雑なのにコメディでもあるのがすごい。住人みんなでつかみあい殴り合いするところとか傑作だった。
人を競争に駆り立てる社会の仕組み。双子の家について、「家父」の支配と権威の失墜がわかりやすくて滑稽に描かれていて好きだった。階級／競争を象徴するバカデカいピラミッドが台車にのせられ家の外に運ばれていくさまは清々しくもある（現実に個人が自力でその仕組みから逃れることはできないのだけれど）。
学歴や所属ではなくひとりの人間としての幸せを考えること。イェソの父が人前でうぇえんと無防備に声をあげて泣くところはさすがに見ていてしんどかった。イェソが祖母に「じぶんが（医者に）なればよかったじゃん！」という言葉を放った場面も印象的で、イェソの率直な声に胸が痛い。祖母の時代に、自分が医者になるなんて選択肢はおそらく用意されていなかっただろうから（その次の世代でさえ博士号をとっても育児のためにキャリアを諦めた女性がいる）。
登場人物が問いかけるように画面のこちら側を見据える演出がカッコいい。
