イギリスのコメディは肌が合う。そこそこ真面目で、そこそこふざける。モンティ・パイソンをみても、どこかにペーソスがあり、ナンセンスのなかに噛みしめるべき味わいがある。
リッキー・ジャーヴェイスはイギリス、アメリカでは名を知られたコメディアンで、確かゴールデングローブ賞かなにかで司会もしていたと記憶している。つまり、実力キャリアともに確かなリッキー・ジャーヴェイスが50代を迎えて取り組んだのが、この『アフター・ライフ』なのである。
最愛の妻に先立たれた喪失感で、自暴自棄になり、常に自殺願望につきまとわれているコミュニティ新聞の記者が主人公。「犬に餌をやるという仕事がなければ、とっくに自殺しているのに」とうそぶきながら毎日を過ごしているのだが、自暴自棄なだけに周囲に対する優しさが欠落している。
同僚を傷つけ、ご近所に暴言を吐き、取材対象者を小馬鹿にする。そんな主人公を繋ぎ止めているのは、毎日見ている亡き妻が遺してくれた動画。その動画を見ている時の表情が,本当にいい。妻を見れる喜びと、もう会えないという悲しみが同居したその表情をみると、翌日会社でどれだけ悪態をついていても、そこに人間としての味わいが出てくる。
そのことを知っているからこそ、同僚達も彼に優しい。その優しさを時に疎ましく思いながら、そして、時にその優しさに甘えながら、日々は過ぎていく。
特にシーズン1は見事で、主人公と一緒になって周囲に悪態をつき、その後、いやゴメン、と謝ってしまいそうになる。何か事件が解決するのではなく、ほんの少しの希望のようなモノと、命を投げてしまいたくなるような喪失感。その間を行ったり来たりしながら、主人公は死の淵ギリギリの緩衝地帯から生きる側へとほんの少しずつ歩いてくる。
脚本、監督、主演共にこなしているリッキー・ジャーヴェイスの集大成と言える作品だと思う。シーズン3が作られるなら、ぜひ見たい。