渡邉ホマレ

ブラック・サマー: Zネーション外伝 シーズン2の渡邉ホマレのレビュー・感想・評価

4.2
「いや…season2は求めてないって…」と思ってたけど、やっぱり良かったseason2!

『ブラックサマー』の素晴らしいところは、不条理であること、エモーショナル過ぎないこと、低予算である事を上手くいかしていること、そしてゾンビが哀しく感じられることだと思う。

本シリーズでは、セリフやナレーションによる説明をほぼ省き、映像によって「状況」だけを描きながら、ショートショートの連なりによって巧みに群像劇を成立させていく。

今回は時系列を部分的にシャッフルする事により、冒頭で描かれたシーンへの「答え合わせ」が映像を観進めていく事で成り立つ仕組みなど、飽きさせない演出が楽しかった。

またロケ地の環境や地形、建造物を存分に利用した物語作りは、低予算を逆手に取った手法だけれど、前seasonより確実に上手くなっていると感じる(前seasonの学校とかは、ちょっと退屈ではあった)。

『ウォーキング・デッド』のようにシリーズが長く続くほど、ゾンビへの恐怖は薄れ、登場人物への認知度が高まり、ゾンビそっちのけでエモーショナルな人間ドラマへと発展していきがちなのが、昨今のゾンビ作品の弱点だと思う(こないだ日本で作ってたやつはそれをあざとく狙いすぎ)のだが、『ブラックサマー』の良いところは、キャラクターに調味料をかけ過ぎないところ。何しろほとんどの登場人物が特別美男美女というわけでもない、極々普通の人々だ。だからいつ、誰が脱落するのかが先読みし難く、たった1体のゾンビにすら四苦八苦する。

そうだ。「たった1体のゾンビ」が如何に脅威たり得るかを描くのも上手い。確実に処理できなければ、その場にいる誰がが餌食となり、1体が2体に、2体が4体に…と、少数の現場がいつの間にか地獄と化す。

今回の舞台の多くは雪深い山中なのだが、人口密度の低い、ゾンビ作品としてはやや迫力に欠けそうなシチュエーションでありながら、season2らしい人間同士の争いと、前述の「たった1体のゾンビが」を巧みに織り交ぜる事で、前season以上の緊迫感・緊張感を生み出している。

『ゾンビランド』や『ウォーキング・デッド』なんかでゾンビを認識した方には物足りなく感じるかもしれないが、ロメロ御大や終末パニックもの、「世界のルールが変わってしまった」作品をお好みの方には是非オススメ死体。