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緑豆の花のclydebarrowのレビュー・感想・評価

緑豆の花(2019年製作のドラマ)
4.8
19回の途中で、中間報告的に。

この時日本がどう動き、この後日本が何をしたか知っているので申し訳なくて録画したまま放置してしていたのだけれど、見始めたら面白くて。

全羅道の政治的風土については、高麗に組み込まれることを最後まで拒否したとか光州事件、大統領選のあれこれが影響していると言われているけれど、東学党の乱(今は農民蜂起という位置付けなのね)もきっと無関係ではないと思う。
それにしても、この頃の日本、つまりは明治政府、本当に酷いな。朝鮮半島の人たちもアイヌの人たちも蹂躙し、植民地主義を具現化することが欧米列強と肩を並べることだと勘違いした大バカ者。
下からの解放(東学党の乱)を模索した韓国と、上からの(つまり藩士による)体制刷新を受容した日本。その後の民主主義のあり方を見ると、違いは明白。大統領経験者が、その在任中の罪をきちんと問われる韓国と、明らかに有罪であり違法であるのにうやむやにされる日本。どちらが、民主主義のあるべき姿を体現しているかは、言うまでもない。
さて、19回まで観て何がいちばん面白い、というか物語に深みを与えていると思ったかというと、それはズバリ!ユン・シユン演ずる弟のサイコパス(鬼)ぶりである。ユン・シユンが上手いのはいうまでもないが、こういうキャラにした脚本に脱帽。「あれ」と呼ばれて恐れられ、狂人扱いされていた兄が情の深い温かい人で、実は、弟の方が常軌を逸した狂気を胸の奥にひめていた、という展開が、史実を基にした、つまり予定調和的なストーリーに深みをもたらしている。
きっと、これまで観た韓国時代劇でいちばん重厚で美しい作品として記憶することになると思う。

【以下、最後まで観たところで追記】
「歴史は”無名の戦士”と呼ぶが、私たちはその名を知っている」という言葉が胸に沁みる。
最後にキム・チャンス(のちのキム・グ)を絡ませたことで、切ない物語に一筋の希望を与え、韓国の今に繋がる強い意志を感じさせるドラマとなっている。
また、いわゆる「反日」一辺倒に流れることなく、外国の介入を招いた王や官僚ら支配層の腐敗と怠慢と無能もきちんと描かれていて、海外(2020 New York Festivals World's Best TV & Films)で評価されたのも納得。
特に印象深いのは、一人一人の死にざまを丁寧に捉えた戦闘シーン。それぞれに名前があるように、それぞれの人生と意志と決意が感じられる映像となっている。
さらに、細かいことだけれど、ある人がある人を殺害したシーンで、二人の間の1本の木を境に、殺した側だけ一瞬モノクロになるのも上手い演出だと思った。
登場人物の中でいちばん複雑で深いのは、ユン・シユンが演じた弟だと思う。
強烈過ぎて苦しくなったら、「サイコパス・ダイアリー」のチャーミングでキュートなユン・シユンでお口直しを。
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