“うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと”江戸川乱歩
「史実を基にしたフィクション」と冒頭に記している以上、十分予想できる陰惨な展開と結末に、壮大な夢オチという救いが用意されている。そういう点でも、エンタテインメントの王道を行く作品だと思う。
史実と齟齬が生じない範囲で、8人の皇子たちのキャラをチャーミングに彩り、歴史に名前が残らない立場のヒロインを設定し、しかもその彼女が、なんなら歴史を動かしてしまったかも、という展開を見せるシナリオが素晴らしい。
8人の皇子、誰もがそれぞれに魅力的だったけれど、特に第三皇子を演じたホン・ジョンヒョンの迫力の演技が良かったな。
バーチャルとリモート花盛りの今、充実感どころかリアリティすら希薄になっていく「うつし世」より、濃くて痛くて美しい「夜の夢」を生きてみるのもいいかも。
