kamico

ミセン-未生-のkamicoのレビュー・感想・評価

ミセン-未生-(2014年製作のドラマ)
-
《日常で우리文化を描ききった》

韓国の国民性を描くからこそ生きるドラマだった。우리意識우리文化우리思想...このウリが一体どんなものなのか、日本で暮らしているとなかなかすんなりとは理解しがたい。韓国滞在中にこのウリについて触れたことがあれば、“ああ、これがそうなのだ”と察しがつく。それは、とても温かい。

上場企業で働くサラリーマンの日常を社会的側面から家庭環境や心理状況などのパーソナルな側面まで、広く網羅した脚本だった。原作は囲碁漫画だと聞いて、これだけのメンター要素を時にコミカルに描けてしまう理由がなんとなくわかる気がする。

社会的側面といえば、共働き・女性雇用・ワーキングマザー・時間外労働・学歴社会...日本でもよく論じられている社会問題が多くて共感しやすかった。かといって、ドラマのなかでそれらを根本から改善するような流れは見受けられなかった。あくまで、問題提起程度にとどめられている。ただし、直面する問題を緩和するように登場人物たちの言動が効いていた。共感、労い、ときに反発しながら被害者を救おうとする様子が描かれる。それもまた우리があってこそ。

韓国の会社員事情は正直わからない。ただ、日本に置き換えるならばインターン生が残業漬けになることはまず無いし、社内業務を自宅に持ち帰ることにも厳しい。それがさも当たり前かのように描かれていても、ここでは違和を感じなかった。伝わってきたのは業務の過酷さではなく、主人公が置かれた状況をどう打開していくかという前向きな姿勢だった。それでいて、会社員のリアルな姿を広く網羅しているから終始感情移入を誘った。

ときに自分自身の社会生活を省みる余裕もあった。新しい環境に身を置くと必ずしもいいことばかりでは無い。同期のありがたみ、上司との距離感、会社のスタンダード、待遇の違い、思うようにいかなかった経験は一度や二度では無い。

題名にもなったミセンが何なのかはあまり多くは語られない。ただそれはチャングレのようなのびしろ社員を引き上げるための一手になりうる。

オサンシク課長の存在はときに主人公が誰なのか分からなくさせるほど、リアルすぎる会社員の姿を演じた。パパの顔、旦那の顔、先輩の顔、後輩の顔、四方八方から圧のかかる立場だ。決して一人の時間は多く無い。オ課長(のちのオ次長)ほど愛をもって身を振るう人物はいない。

演出で好きだったのは、羽根を生やすシーン。羽ばたくための羽根を生やしたのだけれど、グレちゃんに天使の羽根を生やすべきじゃ無いかと、生やす人間違えたんじゃないかと、実際はそんなことないけどね(笑)目をキラキラさせたグレちゃんが最高にキュートでした。
怖いもの嫌いなベッキちゃんを弄るヨンイさんも好きです。グレちゃんの母に匹敵する冗談上手でしたね。
最終局でのグレちゃんのブラックぶりは完全に母の血を受け継いでいて、肝が座り頼もしくもあり、オ次長への冷静な対応がたびたび見られます。キムドンシクさんを置き去りにして、最強タッグを組んでしまったなと。

ノロジカ蜂蜜の人が最初・中盤・最終シーンで登場しますが、中盤で蜂蜜を持って現れた時に“最初に見たあのときの人”だと気づけなかったのが悔しかったです。印象的なシーンなのに、すぐに記憶が繋がらないほどこのドラマ情報量が多いです。

ドクター異邦人で北の人間を演じていた俳優さん(新しい課長)が後半から出演していて、言葉の抑揚で気づいて私の中でキャラ被りしました。余計な冷徹さを勝手に上乗せしてしまったので、申し訳なかった。

地下鉄でミッションをこなすシーンでは、ビューティーインサイドの女優さん(グレちゃんにしつこいわねと言い放った人)が出演。キム代理もビューティーインサイドでトップバッターを飾った俳優さんなので、ささやかな共通点を見つけて嬉しかった。

《私が好きな登場人物ベスト3》

3位 グレちゃん
ヨンイさんの前での우리への反応が可愛くて、こんな同期ほしいと絶望した。ヨンイさんのこときっと大好きだ。

2位 カン代理
女の好みが信用できる。口数が少ないけれどベッキちゃんのことよく見てるいい先輩。グレちゃんとサシで行ってくれ!

1位 ハンソンニュル
身振り手振りが大胆なハン様は私のツボです。同期想いで同期を一番必要としている彼、ベッキちゃんとの進展に期待←え


お気に入りの言葉や、キャラクターについて、演出について言いたいことがまだまだあるんですが、他はブログにまとめます( ˘ω˘ )

ソウル駅前ソウルタワーを背後に屋上で展開される数多くの名シーン。ミセン、熱くなれました!
kamico

kamico