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悪魔が来りて笛を吹くのShoMのレビュー・感想・評価

悪魔が来りて笛を吹く(2007年製作のドラマ)
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稲垣吾郎版・金田一の第4作。基本的に大きな流れは原作通りながら、細かい部分で変更点が見られる。杉本一文のイラストにそっくりな榎木孝明を椿英輔/フルート怪人にキャスティングしたのが見事。余談だがSPドラマ『刑事一代』では、榎木孝明は帝銀事件の容疑者・平沢貞通役だった。

新宮利彦の姓が「玉虫」で玉虫伯爵の息子に変更。信乃と利彦の妻・華子は登場せず。フルート怪人の初登場は演劇鑑賞の際ではなく屋敷の中で。第一の殺人の殺害方法も原作とは違う。天銀堂事件の容疑者は戦中化学部隊に所属していた(帝銀事件の初動捜査を元にしているかと)。天銀堂事件に関する椿英輔のアリバイは、屋敷での殺人事件捜査中に新証言が得られる等々。またヒロイン美禰子が須磨に同行するのは原作にはなく、西田敏行版を踏襲したもの。

より有機的に物語が進行する改変・脚色が良い。ただ物語がスッキリしすぎて脇の人物描写が少なく、作品全体の妖しさや陰鬱さが薄くなってしまったのが残念。時代が進むにつれやはり“貴族”らしく見えないキャスティングになっていくのも。

戦後当初の混沌とした世相の描写も乏しいが、焼跡に一軒建つ椿伯爵邸を映像化することで時代に取り残された貴族を象徴化。犯人の慟哭が哀しい。
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