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鎌倉殿の13人のeminumaのネタバレレビュー・内容・結末

鎌倉殿の13人(2022年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

今後、大河ドラマは鎌倉殿以前と鎌倉殿以後として語られるのではないか、というくらい歴史に残る一作だと思う、というのも、主人公が死ぬとき我々は今まで泣いてきたはずだからだ。義時の「壮絶な最期」においては、我々は義時が死ぬことにたいして涙が出るわけではない。政子の気持ちに対して涙が出るのだ。
政子は、義時がいまだに帝を殺そうとしていることを知って薬を捨てたのか。おそらくそれだけではない。頼家を殺されたことを知ったからだろう。愛し信頼する弟を醜い仏の姿のままでいさせたくなかったからだろう。

今回つくづく思ったけれど、歴史ドラマは普通のドラマと楽しみ方が少し異なる。日本人なら誰でも源義経と源頼朝兄弟の迎える結末を知っている。だけど結末を知っていることは、ドラマの楽しみを奪うことには全くならない。
全編通しても指折りの名シーンのひとつ、頼朝と義経の初対面の場面。坂東武者は結局自分と志を同じくしてくれない、自分は一人だと嘆く頼朝のもとに、完璧なタイミングで、血を分けた弟の義経が訪れる。涙を流す二人の姿がこれでもかとばかりに視聴者の胸を打つのは、この二人がいずれ、大きな歴史の流れに呑まれ、お互いに刃を向けることになる悲劇を視聴者が知っているからだ。


公暁が源実朝を大銀杏の陰から討つことだって、和田義盛殿が殺されることだって、イケメン畠山が牧の方(ドラマではりくだが)のせいで死んでしまうことだって知っている。
知っているけど、頼むから今回ばかりは、実朝様は死なないでほしい。和田合戦が起きないでほしい。畠山は謀略にやられただけで謀反なんて起こしてないってみんなにわかってほしいと願わずにはいられない。だけどみんな死なないといけない、だって死んだんだから…結末を知っているから切ないってことだってある。何十話も観ていれば、木曽義仲のことがみんな大好きになってしまう。だけどこの人がいずれ殺されることをみんな知っている。こんな切ないことがあるだろうか…


一番度肝を抜かれたのは政子の演説だ。大学受験のときに政子の演説は全文覚えた。まさか、覚えた演説のほかに真ん中部分があったとは。まあほんとはないんだろうけど、なかったことなど証明できない。吾妻鏡に書かれていない部分がなかったかどうかなんて今となってはわからない。
義経の最期に義時が立ち会っていなかったかなんて証明できない。虚実を織り交ぜて物語を作るのが巧すぎる(虚実ではないな、想像と史実だ)。とにかく義経のキャラクターがあまりに好きだ。今まで何度となく描かれてきた義経はそれこそ史実に残る姿ではない。天狗を師匠に持ち、船を八艘飛び越える、物語上の姿だった。それを笑うかのように史実に忠実な姿にした。義経は実際のところ、頼朝に報告せず上皇から官位を受けたし、屋島を奇襲した。とても誠実で挑戦的な九郎義経像だと思った。死ぬとき涙ちょちょぎれるほど泣いた。菅田将暉すごすぎ


書き始めたら止まらなくなったからこのくらいにするけど、一番かわいそうなのは上総守だからな、わたしは頼朝が上総守を殺したこと一生恨みます。
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