horry

天気がよければ会いにゆきますのhorryのレビュー・感想・評価

4.5
かなり良かった。
北部の小さな町(村に近いのかな?)で空き家を改築した「グッドナイト書店」を営むウンソプ(ソ・ガンジュン)と、書店のすぐ側のペンション「胡桃ハウス」にソウルから戻ってきたヘウォン(パク・ミニョン)を中心としたストーリー。ソ・ガンジュンもパク・ミニョンも、これまでにない役柄だけど、すごく良かった。
とても寒い地域での撮影だったようで、冬の寒々とした空気がストーリーとよくあっていた。春になって花がほころぶ様子が、2人の心情をとても美しく表現していたと思う。

田舎町が舞台で、不眠症の書店店主、都会から(戻って)来た女性という設定は『海街チャチャチャ』に近い。とても暖かく優しいウンソプのキャラクラーや出自はホン班長と共通しているし、垢抜けたクールな女性であるヘウォンもヘジンとかぶるところがある。
ただ、ずいぶん描き方が違っていて、たとえば、町の人々の雰囲気。『海街』ではお節介だけど温かい人々という描き方がメインだったのに対して、『天気が……』では町の人間以外は受け入れない人々が中心的で、そうした偏見のないわずかな人が「グッドナイト書店」に集うという感じになっている。

一線を引かれる側であるウンソプにとって、町は、時に生きづらいもので、「裏山」の山小屋が彼の逃避場所となっている。
山は町の人々にとって、命を落としかねない危険な場所。だから、獣のように自由に山を歩くウンソプは、町の人にとっては異物なのだ。

ヘウォンもまた、町の人々にとって異物だ。彼女の家族に関する事件は人々を恐怖させるし、その一方、可愛らしく目立つ容貌は男性からの人気と同性からの嫉妬を集めている。
彼女のおばと母、祖母も、エキセントリックなキャラクターで、町から一家は浮いている(そして、みな男性にもてる)。
彼女たちと親交を持つ数少ない住人が、「グッドナイト書店」に集っているのは偶然ではない。

田舎町の閉塞感、異物である主人公たち、何人かの理解者が集う書店という小さな世界に、活き活きとした空気をもたらすのが、ウンソプの妹フィ(キム・ファンヒ)と、ウンソプの親友ジャンウ(イ・ジェウク)。
この2人が、とても良い。特にフィ。現実に、あんなにうるさい妹がいたらイヤになってしまうだろうけど、彼女の台詞回しとキャラクターで、この作品に広がりが出ている。可愛くておかしくて、そして、ウンソプを深く愛しているのが伝わってくる、素晴らしい演技だった。

ストーリーは、ウンソプとヘウォンの現在と、謎解きに近いそれぞれの過去との向き合いが中心。2人が背負っている傷についての描写が丁寧なので、見ている人によっては、ここでしんどくなってしまうかもしれない。DV描写は特にしんどい。DVのサイクル描写まであり、安定期(ハネムーン期)と爆発期の違いや、「可哀想だから」と言ってしまう妻の台詞はリアリティがあった(こうした描写があまりにしんどかったので、スコア4.5で)。
ただ、血縁をめぐる話や、つらい家庭環境の話が、しっかりと「現在」につながっているので、説得力はある。ご都合主義的な使われ方でなく、ストーリーにきちんと出自のエピソードが組み込まれているのは好感がもてる。原作は小説らしいので、読んでみようと思う。

追記
小説を読んだ。ドラマよりもっと静かで淡々としていた。温かい世界観はそのままで、ドラマはキャラクターを掘り下げていたことが分かった。小説もとても良かったです。

ブログの「葉」はウンソプの「ソプ」だとあったけど、ドラマでもこの説明あったかな?記憶になかった。
あと、小説では、アーノルド・ローベルの絵本『ふくろうくん』に収められてる「涙のお茶」に関するエピソードがあって、これがとても良かった。
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