渡邉ホマレ

ザ・スタンドの渡邉ホマレのレビュー・感想・評価

ザ・スタンド(2020年製作のドラマ)
4.0
1994年のテレビ映画版は、当時レンタルビデオが擦り切れるほど再生した。
ゲイリー・シニーズが大好きになったので、その直後に『フォレスト・ガンプ』で登場した際はちょっと嬉しかった(ロン毛が似合わねーと思った)。

その後京極夏彦も真っ青の分厚さを誇る原作小説を読み始め、ものすごーく長い時間をかけて読了。テレビ版と筋は同じだが、人物描写のきめ細かさに驚き、当時大嫌いだったハロルドの気持ちがわかったような気がしたものだ。

「IT」と同様、当時の映像化作品としてはアレで十分…というか、アレ以上にやるのは無理があるだろうと思っていたのだけれど、幾度も話題に登っては消え登っては消えしていた新映像化版が遂にリリースされたとあっては黙って居られず、他に特段気になるコンデンツのないSTARZPLAYの無料期間を利用して鑑賞(ホント…どーゆーつもりなんだろうApple +)。

映画シリーズか、ドラマシリーズか…と制作が難航した感のある新作『ザ・スタンド』を漸く鑑賞。

元来「映像化不可能」と言われた本作だが、映像クオリティとしては申し分ない。それでもキング作品の中でも最も綿密に書かれた人物一人一人の描写をそのまま再現するのは不可能。だから1994年版のように、「そのまま」描くという正攻法は排除し、ウイルスパンデミックからマザーアビゲイルの下に辿り着くまでの旅と、辿り着いて以降の話をシャッフルする様に語る手法が取られており、スピーディでテンポが良い。
ただし、原作や1994年版を知る者以外にとっては、やや分かり難い可能性もあるので注意が必要だ。

物語の大筋は変わらないが、1994年版と比較しても人種に多様性が認められ、それが嫌味なくさらりと行われている事に好感が持てる。フラッグのデザインも1994年版より全然良い 笑。

またスタッフロールを観ていて「おっ」と思ったのは大事な終盤の7&8話を監督しているのが、ヴィンチェンゾ・ナタリ(!)だという点。みんな大好き『CUBE』や、私だけが大好きかもしれない『スプライス』のナタリだが、そうか…Netflix限定の『イン・ザ・トールグラス』はナタリ監督作品だった(…正直イマイチだった)。
その関係性か…。
イヤイヤ!しかしながらクライマックスとなる7&8話は、なかなかの見もの。
『スプライス』を想起させる異種交配描写から、「悪側についた人々の中にも確かに残った光」の描写。
『ジャスティス・リーグ』で光速ヒーロー「フラッシュ」を演じたエズラ・ミラーの怪演も光り、これらを上手くまとめあげた印象だ。

そして最注目は、原作者キング自身が脚本を担当した最終9話。
「キング脚本」というと若干しり込みしたくなるところだが、本作では別。素晴らしいものだった。
ネタバレ…ではないが種明かしをすると、原作および1994年版の物語は8話でほぼ終わっている。だからこの9話は、原作既読者にとっても未知の領域。
「善と悪の攻防」を描いてきた8話までとはひと味違う、「その先」にあるものを描いてくれた点でとても感慨深いものがあったし、最後に残るメッセージはシンプルで当然のようでいて最も難しく、これまでの人類が果たせなかった「課題」の様に感じる。
だがこの「課題」を果たせなければ、あの人がまた元気になっちゃうから…笑。

と、やはり意義ある映像化リブートだったのだと思わざるを得ない。

STARZPLAYに入会して!…とは言わないので、とりま無料期間中に一気見するのがオススメだ。