horahuki

呪怨:呪いの家のhorahukiのレビュー・感想・評価

呪怨:呪いの家(2020年製作のドラマ)
4.0
全ての『呪怨』シリーズの中で一番好き。

何をもって『呪怨』とするのか。その発想がニコラスペッシェ版『The Grudge』と非常に似ている。もともとオリジナルで打ち出された死の滞留と連鎖こそが『呪怨』であるはずなのに、伽倻子と俊雄のキャラクターに重きを置き続けたところにシリーズの限界があったわけだけど、ペッシェ版も本作もしっかりと原点に立ち返り『呪怨』とは何かを真摯に考えているのがよくわかる。

まあ『学校の階段G』とかまで遡ると原点は伽倻子になるわけだから、キャラ派生の方向ももちろん正当ではあるんだろうけど、それが足枷になって衰退してしまってたのが現状だし、ここで伽倻子・俊雄に頼らない方向性を同時期に日本とアメリカで打ち出したってのは偶然じゃないやろね。

そして、高橋洋がガッツリと噛んでくれたからか、90年代Jホラーの雰囲気が画面からマイナスイオンみたいに出まくってる。それも『リング』等の有名作のようなまとわりつくヒリヒリ感だけではなく、描かれる年代によっては『新生トイレの花子さん』のような少しマイルドな感覚も同時に植え付けてくるのがすごくノスタルジー。こんな空気感をまだJホラーで出せるのかっていうのが驚いたし、何より嬉しかった。

『呪怨』の強大さ…というよりも「死」の強大さ。あまりに強大ゆえに生者は「死」に憑かれ翻弄されるしかない。そして一方ではその領域に引きつけられる。恐れと魅力。その相反する感情。わざとらしく流される各時代を代表する「死」のニュースばかりが目に止まる。その辺りにも「死」に対しこの2つ感情を抱く人間の救い難い性を見出せる。人知を超えた決して掌握することのできない「死」の強大さに本作は立ち返ったように思える。

『君の鳥はうたえる』は大好きだけど、三宅監督の演出のうまさに序盤から引き込まれた。テレビを見る行為。そのひとつから派生し流れるように情報の浮き沈みが行われ展開していく華麗さ。Jホラーでも記憶を描く時に乱用されてきたモノクロ表現にも手を抜かず、同様に記憶を描きながらもモノクロだからこそ醸し出せる異様さを植え付ける恐怖演出が尾を引くようにまとわりつく。私はフランジュ『顔のない眼』を感じた。更にはJホラーの原点のひとつであるクレイトン『回転』意識の静かさと『屋敷女』のような残虐さの同居。

そして児童虐待と貧困というシリーズ特有の(恐らく)メインテーマの着地点は次シーズン以降に持ち越しになったけれど、それ以上に続きの物語を純粋に見たいと思わせてくれる面白さだった。続きはよ!ネトフリ解約しなくて良かった!
horahuki

horahuki