こなぱんだ

サイコだけど大丈夫のこなぱんだのレビュー・感想・評価

サイコだけど大丈夫(2020年製作のドラマ)
5.0
終わりましたね。
マジで近年稀に見る大傑作でした。

これ、"マジで"もはや「映画」ですよ、、、、

主人公ガンテは自閉症の兄サンテを養いながら生活しており、サンテの症状の起伏によって引越しを余儀なくされる状態。
そんななか、彼が勤務する精神病院で童話作家のコ・ムニョンの朗読会が開かれる。

一応、この2人のラブストーリーではあるのですが、とにかく芝居が素晴らしいのと、精神病患者の映し方が本当に素晴らしすぎます、、、、

サンテはコ・ムニョンが描く絵本のファンなのですが、コ・ムニョンのサイン会に招待されるシーンがあるんですね、そこへ向かうサンテをひたすらカメラは映し続けるのですが、アニメーションとCGが入って非常に童話的な、可愛らしい映像になる。
すごく楽しそうにするサンテを映しながら、画面は映画のように上下に黒いバーがあるフレーミングされている状態になるんですが、

このシーンの最後、サンテはそのフレームをも越えてくるんですよ!!!!!!!!
反対にガンテは越えることができず、サンテを見つめるだけなのです。

そして、3話のラスト、コ・ムニョンに「アダム」と呼ばれた躁鬱患者は、自分の父親の選挙の講演会場で暴れまくる。でもそれが本当に、本当に楽しそうで、そして同時にカメラは彼をめちゃくちゃ美しく映す長回しのカット。そのカットがこんなにも美しく生き生きとしている人を映し続けるかっていうくらいすんばらしいカットなんですよ、、、
そしてそれを見つめるガンテは「楽しそう」といい、「俺も遊んでいいかな」という。

ガンテは以前コ・ムニョンに「欲望」を抑えつけて生きてると言われている。

つまり、「欲望」に忠実な精神病患者たち(しかもそれは大抵世間から抑圧され、排除される)が、本当に「生き生きと」映されており、反対に健常者であるガンテが、常に「笑ってるけど笑っていない」と言われ、苦しそうに見える(それは欲望を抑圧しているから)、それが物語のストーリーに合わせてそのまんま映像として表れている、本当に素晴らしいドラマです、、、というかもはや「映画」です。

むしろこのドラマの主人公はサンテなんじゃないか、というくらい、サンテの成長っぷりが凄まじいのと、コムニョンがどんどん普通の女の子に見えてくるのが本当にすごい。

ちなみに題名にもあるサイコパスは、おそらくコムニョンのことを指してはいないと思うのですよね。おそらく本物のサイコパスはムニョンの母なので…
どちらかというとムニョンはソシオパスっぽい。

最終話、これまで出てきた精神病患者たちをムニョンとサンテの絵本でどんどん救済していくという、本当に、16話観てきて良かったと思えるような、むしろ「映画」でしかないカメラワークと構造をやってのけているにも関わらず、ちゃんと「ドラマ」としての構造も生かしている、本当に、なんなんだと思ってしまうほどの作りでした。

サンテが「幸せなのに涙が出る」というように、彼らが幸せそうにしているのを見ると泣けてきてしまうんですよね、、、
本当にすごい、すごいドラマでした、、、

追記:見直してるんですけど、第1話で既に「アメリカン・ビューティー」と「JOKER」のオマージュが出てくるとは……これ、"マジで""わかって"作ってますね。
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