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おかえりモネのpokotanのレビュー・感想・評価

おかえりモネ(2021年製作のドラマ)
4.3
【1週目〜9週目】
モネが気象予報士を目指すまでの話。
震災後の厳しい水産業、林業の厳しい状況。

「知識は、武器です。
持ってるだけでは何の意味もないし、
使い方も難しい。ですが、持っている
に越したことはありません。」
ところどころ良い言葉がある。

8週目の「それでも海は」で、震災後の苦悩を描く。
何も失くしていない側と船も家も妻も失った側の両方の苦悩が、重く突き刺さる。
おじいちゃんの強い口調で
「意地で生きてんだよ、漁師は。」
という言葉が胸を打つ。
何をしてあげられるのか、と苦しむ。

それでも、
「海は、嫌いになれないんだわ。
海に恨みはない」
とりょーちんは言う。
「俺らは親たちとは違うからさ。
過去に縛られたまんまで何になるよ。
こっから先の未来まで
壊されてたまるかっつーの。
俺らが前を向くしかないんだ。」

あの津波で心に傷跡を残した多くの人に寄り添った脚本が良い。

【10週目〜19週目】
報道気象、スポーツ気象ビジネス。

報道気象の難しさ。
少数よりも不特定多数に対しての情報の選択。
伝え方。
気象予報はチーム戦。

「この人の言う事ならその情報を信じよう。
そう思わせる信頼を日々築き上げていくのも、
私達の仕事でしょうね」

気象予報士という仕事の裏側が深く楽しい。

そして、りょーちんの件を通して、それぞれ若者たちの震災の隠してた痛みを少しだけ吐き出す。
やっぱり胸が苦しくなり、泣ける。
並行して、未知のりょーちんへの想い、りょーちんのモネへの想いへの進展もあり、切なくなる。
「お姉ちゃんは正しいけど冷たいよ」

さらに、モネと菅波先生の進展。
80話でのコインランドリーでのシーン。
大学病院を離れることを伝えたあと、とっさに手を握ったモネに対して、それまでの敬語での会話から「どうしたの?」と優しい声を掛ける菅波先生のやり取りにドキッとした。

【20週目〜最終週】
気仙沼で地元密着したラジオパーソナリティとしての気象予報。

嵐の中の朝岡さんの言葉がズキッと刺さる。
「私達は自分たちの力を
過信してはいけません。
私達は預言者ではない。
未来を予測できるのは、
あくまでも科学に基づくデータの
集積と分析によるものです。
不確かな未来を自分たちの思うように
操作出来るわけではありません。
祈ることしか出来ない経験を
私達は何度もしています。
最善を尽くしました。
これ以上出来る事はありません。」

りょーちんの吐き出した本音。
それをちゃんと受け止め、
優しく未知のことを推すモネが素敵だった。
「大丈夫、なんて突き放さないで」
本音を言えてやっと殻を破れて、背負ってた重荷を少し外そうとするりょーちんに涙する。

最終回でタイトル回収。
なるほど。

大震災以降、それぞれが抱える苦しみや葛藤を乗り越えて(乗り越えようと)、一歩未来に向かって進むために、優しく背中を押してくれた傑作だった。
何回泣いただろう。
印象的な台詞の安達奈緒子さんの脚本が秀逸。
そして、とにかく永浦家、りょーちん家族のキャスティングが合っていて、みんな上手いし見事。
観て良かった。
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