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孔子のtanziのレビュー・感想・評価

孔子(2011年製作のドラマ)
4.2
想像以上の良作。
見ていてすぐに馴染んだのは、かつて大陸で『第五世代』と呼ばれた監督たちがまだ若かりし頃、8,90年代の油の乗り切った頃の作風を思い出させたからかもしれない。

孔子とのちの世で呼ばれる男、孔丘の母が天涯孤独になった直後からストーリーは始まる。この1話目で自分は心を掴まれた。

弱小なのに国や民のことなど顧みず自分の利権と地位を守る事しか頭にない魯の為政者、王と三桓氏の世。
2022年の日本の政治と社会との見事なまでの相似がまずゾッとするほど生々しかった。

その上ドラマだから創作も多い。
ここでは陽虎と少正卯が幼馴染みとして登場。
腐敗した世界で這い上がろうと強い向上心と少しの才と冷酷さを武器に地位や利を求め奸計を巡らすこの男たちは現代にも絶対にいて、現実社会の歪さを突きつける存在として配置したのだろうと思う。

後半まで暗躍した彼らとの対比により孔丘という狂気を孕んだ桁外れの清廉さは一層際立ち、苦悩と孤独、矛盾にのたうち回った後に訪れる静寂の深さよ。すごいドラマだった。
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