ひば

悪の花のひばのレビュー・感想・評価

悪の花(2020年製作のドラマ)
5.0
『怪物』と似たようでこっちの方が好きだった。テーマは父親の不在。家父長が強力な国で"親が親なら子も子"に対して全力の否定劇だ。そんな親だからこそ自分がある、私たちは親子なのだからあらゆるものは遺伝する、そんな親に似ている部分があることが幸せである、いずれは幸福を実感するから遺伝とは尊ぶべきものだ、そういった先天的血縁神話に完全にNOだ。あんな人間を家族内で決定づけられるほど家族という概念はチートなものではない、どんなコミュニティも閉鎖型になれば死ぬ、愛が解決するものがある一方で解決しないものもでかい、他者の中に自分を探しても答えはない、環境の中で個人の思考行動経験こそ人を人たらしめることにこんなにも悲痛に訴えかける。不思議な終わり方だったが、罰か解放か、制約(枢要徳)か、まぁとにかく幸福を目指してほしい。
化物レベルとしてはかなり怖かった。顔がタイプなだけに。優れた弟子は師を裏切るシスの考え方なんよ。結局のところ体力のあるやつが一番怖い。脚本がうまいので後半はぐっと引き込まれた。いくら綺麗な人たちだからといって端正で髪型も似た人間を集められたら見分けつかんすよとはじめ苦言を申し立てていましたが元々逆手にとる気だったとは思わないじゃん。ある事件を追う大衆の道筋、夫じゃね?と追う妻の道筋、犯人目線の道筋がそれぞれあり、それぞれ一つずつ整合性をとって視聴者が理解していても各々の当事者も確認していかないといけないのでストーリー的にはかなり手間がかかり技巧が問われる難しいドラマだったと思う。とても美しい過去や愛のシーンで流れるピアノの旋律の「Someone To Be Remember」が流れる度にウウ~~~ッ噛みしめやってた13、14、15話とても好きだった。な~んもわかってない人間に屈託のない笑顔で「幸せにする、きっとすべてが変わる」って言われたらそれは好きになっちゃうよ。甲斐甲斐しい男とふらついている女という従来のジェンダーロールを逆にしたカップルが出てきてしかも女が忌避すべきヒロイズムをやりとげたので驚きました。タイプの話でいうとやっぱり班長がナンバーワン…班長は裏切らない…すきです(経験則:韓国ドラマで室長は悪い率が高い)
余談だが、父親の描写については全然方向性が違うのに『リトルフォレスト』の母親を思い出した。人物像に迫らず共感をさせない。現れないのに過去自分が見た姿だけがそこで生きていてそこにいる、全然人柄はわからないのに莫大な影響をもたらしている銀河の中心に位置するブラックホールのように
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