イーグル

俺の家の話のイーグルのレビュー・感想・評価

俺の家の話(2021年製作のドラマ)
4.0
【笑いの中に、家族とは生とは死とは、という問いがある話】
◆あらすじ
能楽の家に長男として生まれた寿一は、能の稽古を一生懸命頑張るが、ひとつも褒めてくれない父親に嫌気がさし、17歳で家出してプロレスラーに。
その後父親が危篤となり、42歳で家に戻る事となる。

◆シナリオの軽快さ
話の筋だけ見るとヘビーな印象を受けるが、全体的にコミカルにテンポ良く描かれているので、とても心地よく見続ける事ができた。
テンポの良さと笑いで引き込まれて見ている内に「死生観」や「人間とは」という重いテーマを考えさせられた。
これぞ『エンタメ』だなあと思わされるドラマだった。

所々に散りばめられた「ギャグ」要素が重いドラマを軽くし、退屈なシナリオを面白くしている。だけど、クドカン以外がこれをやると駄々滑りしそうだなあ…。。笑えるか笑えないかギリギリ絶妙なタイミングで差し込んでくるので、神に愛されているとしか思えない。
「♪阿佐ヶ谷〜次は荻窪」
「(男湯でも)堂々としてれば大丈夫!」
「セックスシンス」
どれも最高だった。

◆愛されるキャラクター
鳥頭すぎていつも登場人物の名前を忘れてしまう私が、覚えてしまうくらい、一人一人全員魅力的だった!
熱血一本気な寿一とか、家族に恵まれなかったさくらとか、大人になって反抗期を迎えた寿限無とか、みんなにきちんと背景や行動原理がしっかりしてて、いつの間にか観山家全員大好きになっていた。

特に主人公寿一の優しさがとても魅力的だった。泣いてる女の子にハンカチを差し出すようなスマートな優しさじゃなくて、「めんどーだな!」と言いながらも認知症の父親の世話を甲斐甲斐しくするようなぶっきらぼうだけど本質的な優しさ。大人になると、本当の優しさについて考えさせられる場面が増えるので、寿一のまっすぐな性格は、見ていてこちらまで性格矯正させられるくらい、まっすぐな優しさだった。これが真に優しいということ…。

◆家族とは?生とは死とは?を考えさせられた
最後は「死」で結末を迎える。
「代わりに笑ったり泣いたりするから」

最後のナレーションがとても印象的だった。
人が死んでも全てが終わりではない。
家族は続き、死んだ人その人が残したものは確かにそこに存在していて、何かを介在して人々の中に残っていくのだ、と。

テーマとなっている「能楽」の本質も、踊りは師範から弟子に、そのまた弟子にと継承されていく。
これが「家族」の本質と似ているため、テーマで選ばれた理由だったりするのだろうか。

時は淡々と流れていく。どんな人も死を必ず迎える。
自分はどんな家族でありたいのか。何を人に残したいのか。
モノカネではなく、人との繋がりや気持ちの受け渡しをもっと丁寧に大切に、そして自分に素直にしよう、と考えさせられる一作であった
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