リプリー

イノセント・デイズのリプリーのレビュー・感想・評価

イノセント・デイズ(2018年製作のドラマ)
4.2
思いを断ち切れずストーカーしていた男の家に火を放ち、彼の妻と双子の赤ん坊を殺した女、田中幸乃。彼女は、罪を認めたものの反省の弁は一切述べないまま死刑判決を受ける。生まれてきてすみませんと淡々と言い、なぜか去り際に傍聴席に向かって笑みを浮かべる彼女。
彼女はなぜ火を放ったのか。彼女はなぜ男に執着したのか。そもそも彼女は本当に犯人なのか…。
幼なじみである佐々木が調べる過程で田中幸乃の人生が、人柄が、事件の真実が少しずつ明らかになっていく。

原作は何年か前に読了済で、その年のベストと言ってもいいくらい好きな作品で、かつ妻夫木聡&石川慶監督という愚行録コンビということでずっと見たかったドラマだ。

理屈には合わない、でも本人にとってはどうしょうもないこと。心の奥底で思っていることと真逆の行動をとってしまう人間の愚かさ、悲しさ、業が痛々しいくらいに描かれる。
周囲はあのときこうしていれば、あのときああ言ってなければと悔やむが要は本人が選択したことなのだ。
そんな選択が許されるはずがない、と他人は思う、何なら本人も決めかねているかもしれない。でもそう決めたのだ。
最後の最後に彼女が刑務官に言う一言にどうしょうもなく心が震えた。
誰が悪いとかいう言い方もできる。でも僕はこの作品にいわゆる悪役がいたとは思えない。
なぜなら人は過ちを犯すから。利己的だから。愚かだから。心にもないことを言い、感情に身を任せた行動をとるから…。

このどうしょうもなさ、やるせなさが何とも味わい深い作品でした。