まこ

岸辺露伴は動かないのまこのレビュー・感想・評価

岸辺露伴は動かない(2020年製作のドラマ)
3.8
「僕が敬意を払うとしたら、読者だけだ」という台詞、ドラマオリジナルなのに岸辺露伴の台詞すぎて泣いた。納得できないような改変はされていないし、むしろ若干ストーリー違うからこそ、こうなっちゃったらこのあとどうするの?!と新鮮な気持ちで観られて、緊張感が失われることもなかった。ただ、特に大きく変わっていた3話、原作で不明瞭だった部分がわかりやすく再構築されて綺麗にまとまっていたのは、ドラマとしてやるには正解だったのだろうし、自分のぼんやりとした解釈に新たな輪郭を与えていただいたことには感謝なのだけど、あの原作の意味不明な設定や世界観、不条理さが好きだからという、好みの問題で、、ちょっと綺麗すぎてさみしい気もした。
あと違う意味でやられた台詞、泥棒に対しての「途中で読むのを止めるのは最初から読まないよりもっと悪い」のあたり。現在進行形で作品を作り続けているクリエイターのことを、しかも同じシリーズが続いているのに過去の人のように扱って、最新作を追うことを放棄して、好きだった頃の思い出話しかできなくなった人間にはなかなか耳が痛い言葉じゃあないか…冒頭からこんなダメージ食らうと思わなくて、びっくりしちゃった。でも、ここ好き。思考が極端だけど、こうやってねちねち言うのは露伴ちゃんくらいだろうけど、胸に刻んでおこ。あ、思い出話はいつまでもする…
原作を忠実に再現しようとするのではなくて、キャラクターの個性は残しながらも実写は実写と割り切っている感じだから、みんな実在していそうに思えるのがいいな。高橋一生露伴のビジュアル、大人しくて爽やかで、おへそ出た服でもないし、ただのかっこいい高橋一生だ…と思ったけど、喋り出すと完全に三次元の露伴だった。ご本人、めちゃくちゃジョジョファンと知って納得。そして森山未來はもうジョジョの世界から飛び出してきたみたいだった…さすが、荒木作品の舞台で主役を演じた役者さんだ、空気から違うんだ…
四部の実写も観てみようかという気持ちになってきたけど、この動かないシリーズは出てくるスタンドがヘブンズドアーのみで、スタンドバトルもないから実写でもこんなに違和感ないんだよね。ビジョンのCGをあえて出さないのはよかったと思う。それでも、わたしが好きになったのは蜘蛛をぺろぺろして味を確かめたり、半殺しにされながらも嬉々としてネタをメモする本編の露伴先生だから、このあたりもぜひまたの機会に実写化してほしい。高橋露伴ならCGバトルも受け入れられそう。でもイカれエピソードはどれも、実写で面白くするの難しいかな。そしてこの露伴先生が康一くん大好きなの、あんまり想像できない。
わたしには心臓に悪かったけど、毎話櫻井さんを出演させてくれたのもポイント高すぎる。1話からだんだん聴力テストみたいに聴き取りづらくなっていくの笑った。先生の声が聞こえるのに先生役じゃないのは変な感じがするけど、かつての読者である泥棒にまでも敬意を払っていることが、この声で表現されていたところには一番感動した。
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