takanoひねもすのたり

真夜中のミサのtakanoひねもすのたりのネタバレレビュー・内容・結末

真夜中のミサ(2021年製作のドラマ)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

神の使者を間違えた神父と聖書を都合よく解釈違いで利用した世話役の女性の破滅の話。

人口127人のクロケット島。
かつては漁業が盛んだったが、3年前に原油流出事故が起き、打撃を受けた漁業がようやく少し回復してきたところ。
島の教会、聖パトリック教会を中心に島で起こるミステリー。

1話 放蕩息子の帰還、そしてネッコぉおお!
2話 神父の着任、そしてクララが立った!
3話 神父の正体、そしてイッヌぅううう!
4話 胎児の消失、放蕩息子襲撃される。
5話 真夜中のミサ、放蕩息子の消滅。
6話 徹夜祭、復活の儀式、天使降臨。
7話 全ては無に還る。

個人的には非情なドラマだなと。

かつて漁業で賑わう島が、今ではすっかり寂れ、活気のない町が、若い神父の着任により、熱の籠もる説教を聞き、そしてある奇跡を目撃して信仰心に熱を持ち始めるが、実は神父には隠してきた秘密と目的がありという展開。

本土から離れた島で人口も少なく、ほぼキリスト教徒のなかで、保安官一家がイスラム教。
神父……ひいては聖書の教えを絶対とするキーン(教会の管理者及び神父の世話役)が、島で一番の差別主義者、というと違うか。排他主義者であることがまあまあ皮肉。
(でもよくいるタイプかも知れない)
そして野心家であり支配的。

『死』の恐怖から逃れたく神職についたのに、その恐怖は拭えず、姦淫の罪を冒し、娘をもうけていた神父。
『天使』の祝福の結果から『これは福音だ』と島民や、表立って愛することが叶わなかった妻と娘のために布教するけれど、それはエゴだったと気がつく最期。

飲酒運転で少女を殺してしまったライリーは、服役中に信仰に目覚め神の存在を知ろうとするが、結論は『神はいない』
そして碌でもない自分は死んだら、この体は腐敗して微生物の餌になり土に還る……せめてそれだけの役には立つだろうと語っていたにも関わらず、それすら叶わず塵になる。
救いは神ではなく少女の赦しが視えたことか。

生きるために島へ帰ってきたエリン、生きる支えの赤ちゃんを謎の理由で失い、恋情を覚えていたライリーは目の前で消失してしまう。

奇跡を受けた少女・リーザ。車椅子生活から解放され、自分の足で立ち、歩き、走る喜び。
しかしその奇跡は、消え去ってしまう。

家族全員を失うリーザとウォーレン少年。

妄信は道を誤るということなのか、信仰心が過ぎるとそれは逸脱し神の教えを誤解した集団となるのか、福音に導いたはずが破滅の道だと気がついた時には戻れなくなるものか。

キリストは答えない。
受難は意味があることだと説くけれど、人々の心の痛みや苦しみを消してはくれない。

あれは『天使』だったかも知れない。
人から死の恐怖を取り除き、若さを与えたのだから。彼らが『祝福をもたらす天使』なのだと思うのなら、多分そうなのかも知れない。

あえて吸血鬼とは言うまいと、観終わって思いました。