たそしだ

クイーンズ・ギャンビットのたそしだのネタバレレビュー・内容・結末

クイーンズ・ギャンビット(2020年製作のドラマ)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

今年観たドラマで一番面白かったです!
1話を観たらあまりの面白さに一気観。

とにかく演出がうまく、チェスの知識がなくても勝敗や駆け引きが分かり、引き込まれます。
1950〜60年代を基調としたファッションや美術もキュートで、どのシーンを切り取っても素晴らしく絵になります。

ストーリーはシンプルで、王道のサクセスもの。孤独な少女ベスがチェスの才能に気づき、周りの助けを得ながら、勝利を手にし、やがて世界王者に挑戦するという物語。

良かったのは、サクセスものにありがちな「悪者」がいないこと。
序盤は画面が暗く、登場人物たちの表情も硬いので、ベスにとんでもない不幸が降りかかるのでは……とハラハラします。
しかし、本作はむしろ「やさしい人」たちによって、孤独で自滅しそうなベスが「救われる」物語です。
嫌な奴もいますが、そこまで出張ってきません。敵は好敵手ばかり。
ベスを邪魔する最大の敵は、自殺した母の面影を重ねて自堕落になるベス自身です。

ベスがチェスに目覚めるきっかけも良かった。ドラッグの影響で浮かび上がった天井のチェス盤で、駒を動かすシーンはとくに秀逸です。

シャイベルさんはすごく素敵なキャラだったので、亡くなる前に交流があっても良かったのにと残念な気持ちになりましたが…(ベス、10ドル返してあげて!)。
地下室にベスの記事の切り抜きがあるところは涙なしには観られません。

最終話、どん底に自ら落ちたベスが、いかに周りに愛されているかに気づくことで、最大の敵(ボルコフと自分自身)に向き合えるようになるのは最高でした。

周りがけんめいに手を差し伸べているのに、傲慢で頑固ゆえに気づかないふりをして自堕落に過ごすベスには少し苛立つところもありますが、20歳にもならない少女だもんなぁと思いなおします。

ボルコフ戦の直前、ベニーやハリーたちから電話が来るところは嬉しかった!
ロシアはチーム戦という伏線がここで効いてくるなんて。みんな優しいなぁ。

骨太で、1話1話が映画のよう。また見返したいドラマです。
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