フラワーメイノラカ

クイーンズ・ギャンビットのフラワーメイノラカのレビュー・感想・評価

クイーンズ・ギャンビット(2020年製作のドラマ)
4.5
『ハスラー』『地球に落ちて来た男』のウォルター・テヴィス原作。ベスの橙の髪色にボウイのDNAを感じてしまうほどに、テヴィスの書く「堕落する天才」はたまらなく魅力的だ。

用意された盤上は「1960年代・冷戦下の米ソ対立」。ロケット開発やスポーツと同じように、チェスもまた代理戦争の駒となる。
政治も宗教も性も、個人と繋がっている。その上で、それらのしがらみを喰らい尽くして個人になるということ。着せられているのではなく、自ら選択する。ベスのファッションへの愛着は彼女のイズムのメタファーだろう。

天涯孤独のベスがチェスの才能に目覚めたのは、果たしてギフテッドか、薬の副作用の暴走なのか。これは、彼女の才能が神に愛されているのか、それとも神に与えられた罰なのかという問いかけに等しい。
1話の引きは完全にこれを体現している。16、24飛んで「64小節の旅の始まり」。眠りすらチェスに捧げて、すべての可能性を賭して。彼女は自分自身を犠牲にして、同時に人生の女王であることを勝ち取る。まさに『クイーンズ・ギャンビット』。素晴らしい映像ドラマだった。