YukiSano

クイーンズ・ギャンビットのYukiSanoのレビュー・感想・評価

クイーンズ・ギャンビット(2020年製作のドラマ)
4.7
これこそ現代に必要な物語。男社会のチェス業界を不憫の塊みたいなヒロインが粉々に粉砕していく。超痛快。

シンプルな王道スポコンものにして、徹底的に作り込まれた芸術映画でもある。最後まで観るとアベンジャーズやロッキーと同じ爽快さを得ることができる

とても静かで深い演出と、やり過ぎない気品溢れる映像美なのだが、大筋は少年ジャンプ。しかし、そこに女性の社会的立場や依存症などの問題を巧みに入れてくるので重厚さを失わない。

男根の象徴にも思えるチェスの駒をガンガンへし折っていく。対戦相手は生理的嫌悪感を醸し出す男達が多く見える。

ところがベスが男を知ると、そんな嫌な男達の隠された良い面が見えてくる。そんな彼女の緩やかな成長をファッションやカメラワーク、時には表情だけで伝え、無駄なシーンも無駄なカットもなく、恐ろしいまでに計算し尽くされた映像でベスの内面に迫って行く。チェスのルールは全然知らないのに、鳥肌が立つ程に緊迫感に満ちている。

特に主演のアニャの存在感や表情は最高で、久しぶりに役者として心引かれる女優さんを見た。次回作がマッドマックスのスピンオフ「フュリオサ」であることにも納得いった。シャーリズ・セロンに全く似てないと思っていたが、アニャの眼光と存在感ならフュリオサを演じられるはず。あの年齢であそこまでの貫禄を出せる女優は他にいない。

最高の女優と、完璧な映像。類いまれなるストーリー性が揃ったいつまでも語り継がれる名作に出逢えた。本気で魂に届く作品でした。
YukiSano

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