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TOKYO VICEのsurumeのレビュー・感想・評価

TOKYO VICE(2022年製作のドラマ)
4.3
実話「TOKYOVICE」を下地に描いた話ということでリアルな描写も多くてグロすぎてのみこみにくかった。

消費者金融の契約書に生命保険の契約書を紛れ込ませて、自殺に追い込んで生命保険で上がりを取ってる(しかも銀行の融資を断られた人)という下りだけでも、この世界のグロさを感じずにはいられない。

ホストもとにかく女に貢がせる、貢がせた女からはさらにお金を根こそぎ取りたがる。 奪い合う事に命を賭した人の欲望。

私はここのところ、なぜそんな人と新聞記者と警察が運命の糸を手繰り寄せてしまうのかをずっと考えていた。行き着いた答え、彼らの共通するところは「自我の拡張」だ。

自分の正義を主張する
「新聞記者」「警察」
自分の持ち物を主張する「ヤクザ」
自分の仕事を主張したい
「ホステス」と「ホスト」

この世界は自分のものだということに
命を賭していることが共通している。


このストーリーの中でひとりだけ助かる人物がいる。おじさんの計らいでヤクザの組に入れられた一人の少年だ。彼は味噌汁もろくに作れないと自分の指を包丁で切り落とそうとして、ヤクザをクビになる。彼はずっと泣いている。彼は自分が無い。自分が無いから自己を拡張する人はどう対応していいのやらわからなずに手放してしまった。

たったひとり名前も呼ばれない彼に私は製作者の暗黙の救いを感じる。

映画における何者でもない存在に台詞があることがすごく不思議で仕方ないのだ。

なぜ彼に台詞を与えたのか。
なぜ彼とヤクザを交わらせたのか。

泣いてばかりいる彼は
幸せになれただろうか。

何者でもない自分と重ね合わせ
なぜか涙が出てくるのだった。
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