このレビューはネタバレを含みます
全5話と短いが、最後まで濃密で見応えのあるドラマだった。
最終回はこれまでの伏線をしっかり回収していて心地いい。
・国も企業もお金になる研究だけ大学にさせたがるが、将来どんな研究が役に立つかは誰も予測できないこと。
(前者の研究室の蚊がトラブルの原因となり、予算の少ない虫の研究が救いになった)
・三芳総長は、総長であると同時に学者であること。
(1話ラストで涙していたこと、3話で考古学者であることを指摘され覚醒した流れからの孔子の言葉)
・総長の権限が絶大なこと。
(独断で事実の公表に踏み切れる)
・総長は権力の独占を望んでいないこと。
(須田理事の言う「現実を見てください」と、総長の言う「現実を見ています」の「現実」は全く違う内容だが、どちらも現実であることに違いはない。総長はゼミの回想シーンで意見の多様性を重視していた)
等々。
毎回様々な問題提起があり、どのように着地するんだろうと思っていたが、予想を上回る前向きなラストで爽やかに見終わることができた。
キャストも実力派俳優揃いで、これだけのメンバーを集められるのはさすがNHK。
そして、それぞれのキャスティングの意味!
中身がペラペラな役も持ち前の好感度と演技力で嫌味なく演じ、このドラマをコメディーとして成立させた松坂桃李さん。
序盤は情け無いほどの頼りなさを前面に出していたが、その後誰よりも頼りになる強面キャラを発動。そのどちらもを自在に演じる松重豊さん。
いかにもなフィクサーでありながらラストではどこか飄々と憎めない雰囲気も醸し出す國村隼さん。
鈴木杏さんの使い方も絶妙だった。途中退場かと思われたみのりだが、密かに総長の心を動かしていて、神崎の変化の原動力にもなる脚本も良かったし、鈴木杏さんの演技がみのり役に説得力を持たせていたと思う。