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サンクチュアリ -聖域-のsyuheiのレビュー・感想・評価

サンクチュアリ -聖域-(2023年製作のドラマ)
4.0
2023年の江口カン監督によるNetflixオリジナルドラマ作品。主演は一ノ瀬ワタル。久しぶりに早送りせず通して観た日本の実写ドラマ。

北九州の複雑な家庭に生まれ育った不良少年の小瀬清は大金が稼げるという口車に乗ってジリ貧の相撲部屋に入門する。破天荒で素行の悪い清は批判を受けながらも序の口、序二段を勝ち進み猿桜の四股名を得る。角界に渦巻く様々な思惑、軋轢、陰謀に翻弄されながらなりふりかまわず突き進む猿桜の相撲道!

日本屈指のコンテンツである大相撲を題材に、綺麗事だけでなく"星の貸し借り"といった暗部も描くオリジナルドラマが作られたらさぞ面白かろうと思っていたら、ついにNetflixが作ってみせた。クオリティにはあちこちムラはあるものの、今回リリースされた全8話はひとまず面白く観れた。ごっつぁんです!

元力士や格闘技経験者が俳優として出演しており、相撲部屋での稽古や取組のシーンはさすがの迫真性。取組にはスーパースローやディープフェイクといった映像技術が効果的に用いられ迫力満点。中でも猿桜と強敵・静内との一番は強烈で、相撲のバイオレンスな側面が目を背けたくなるほど強調される。

ストーリーは及第点ながらドラマ全体を通じて台詞回しと演出に難がありキャラクタービルドがかなり危ういが、主人公の猿桜の魅力が終盤ギリギリで芽を吹いたのはよかった。これは元力士が演じる先輩力士・猿谷に負うところが大きい。リアルな稽古と取組を経てきた彼の存在感は極めて魅力的だ。

一方で力士以外のキャラクターの多くは類型的にとどまる。特に政治部から左遷されて相撲番になったアメリカ帰りの女性新聞記者はキツい。相撲素人の視聴者の"眼"としての役回りを果たすはずが日本型作劇の饐えた演出と演技のせいで悲しいほど陳腐。これ猿桜が想いを寄せるホステスでよかったのでは…。

こうした欠点にも関わらず題材の新鮮さもあり今回の8話は面白く観れた。ヒール力士系は『のたり松太郎』『ああ播磨灘』など漫画に名作が多いため今後この路線でいくなら比較対象となるかも。次シーズンがあるかどうか不明だがもしやるなら実写ドラマだからこその展開とキャラクター描写に期待したい。

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