実在したトランスジェンダー男性ブランドン・ティーナの伝記映画。
ネブラスカ州のリンカーンに住むブランドン(ヒラリー・スワンク)は、身体的には女性であるが性別違和があり男性として暮らしている。
ブランドンはフォールズタウンという街で、ジョン(ピーター・サースガード)とトムという二人の男性と意気投合し、ラナ(クロエ・セヴィニー)という女性に恋をする。しかしある事件を機に、ブランドンの身体が女性である事が明らかになってしまう—— 。
髪を短く切り揃え、
胸には晒(さらし)を。
股間には膨らみを。
男性らしい格好や振る舞いで、屈託なく笑うブランドン。
主演のヒラリー・スワンクがアカデミー賞を含む多くの主演女優賞を受賞したとあって、その演技はまさに圧ッ倒的。
役を生きるとはこういう事か。
ヒラリー・スワンクの、演技なのかその人なのか、境目が曖昧になる程に彼女は彼だった…ブランドンだった。
終盤にかけての展開は、筆舌に尽くし難い。
時代はまだ1990年代初頭。LGBTQへの偏見や差別が色濃く残る時代。
服を脱げと強要され、露わとなった下半身をラナに見られるという恥辱。そして、男達からのレイプ…。
警察の取り調べによるセカンドレイプも酷い。「何処に挿入されたのか?」とかどういう意図の質問だよ。ブランドンの心は警官からの無神経な質問により、更にズタズタに引き裂かれていく。
辛過ぎて魂抜けるかと思った。
余談だが、この作品を観終わって、脳内で流れてきた歌がある。
"神様からもらった
この身体と心は
皆それぞれ違う
彼女も君も違う
鼻が高い低いとか
目が一重二重
可愛い可愛くない
でも僕は君が好き"
ウィーザー (Weezer)のフロントマン・リバース・クオモとポップパンクバンド、アリスター (ALLiSTER)のスコット・マーフィーが日本語で歌う為に結成したロックユニット、"スコット&リバース"の「HOMELY GIRL」の一節。
それぞれの身体と心を尊重し合える社会を、切に願わずにはいられない衝撃作。