このレビューはネタバレを含みます
これぞ邦画の良さ！！
こういう人間の繊細さや機微な感情の動きは邦画ならでは。
最近二村ヒトシの本を読んだせいで全て「心の穴」の文脈で観ていたのだけど、
まさに母から娘へ受け継がれていく心の穴、という映画だった。
ルミ子と清佳だけではなくルミ子の母親、義母、仁美、全ての女性の登場人物にそれぞれに心の穴が垣間見れたのがこの映画をより濃密にしていた。
母親視点と娘視点で語られる物語は同じシーンでも表情や言動がどこか違う。
どちらも正しくてどちらも間違っている、そんな解釈違いを上手く表現していた。
清佳が最後の最後に初めて名前を呼ばれるのも圧巻の脚本だった。
ずっと彼女の名前を知らないまま何の違和感もなく映画を観続けて、終盤で初めて名前を知って。自殺未遂をして初めて彼女自身を見た母親を擬似体験しているようだった。
あなたは太陽のような人よ、と肯定し続けて綺麗な世界観を"正"とするルミ子の母親に、ルミ子は"正しく"あるしかなかったのだと思う。そんな母親を唯一"正しい"と思うことで自分の生きる場所を作ってきたのだと思う。
個人的にはラストのシーンは希望のあるものだと感じた。
妊娠した清佳にかけた言葉は決してルミ子自身のものではなく母親の受け売りで、それは一種の不気味さを伴うんだけど、
今までのルミ子ならそんな「母親のような母親になりたい」という感情は湧かなかったはず。
自分で言葉を紡ぐことはまだできなくても、それでも主語を変えて、少しずつ自分の心の穴と向き合ってるんだ、と勇気をもらえる作品だった。
