みん

母性のみんのネタバレレビュー・内容・結末

母性(2022年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

親子の葛藤を乗り越える作品が好きな私にはどハマりした作品。
見重すぎて嫌と思う人もいると思うので、万人受けはしなさそう。

まず清佳(さやか 永野芽郁)の育った環境が過酷で、清佳自身の生まれ持った繊細さと賢さも合間ってさらに辛い状況となる。
母の思い描いた通りの行動をしなければ、疎まれ存在を無視されるので、幼少期より常に大人の顔色を伺うようになる。
さらに幼稚園で火事を経験。
その後、父方の祖母の家に居候をする形になり、肩身の狭い思いで常に張り詰めた空気の家庭で育つ。

そんな母ルミ子(戸田恵梨香)は、一体どんな育てられ方をしたのか、というと、それがなんとまるで聖母のような母(大地真央)に育てられる。キリスト教の影響が色濃いのか、アメリカナイズされており、思いを逐一言葉にしているところは印象的。
虐待の連鎖とよく言われるが、ルミ子は生まれ持って認知の歪みが強く依存心が高いタイプで、たとえどんな育てられ方をしたとしても、心理的虐待をしていたのかもしれない。
もう一つの可能性としては、母方の祖母も最初から聖母のようではなく、子供を育てる中で徐々に成長して行った可能性もある。
認知の歪みで一番印象に残ったのは、清佳がキャラクターものの刺繍を強請った際に、それは小鳥の刺繍をしてくれた母親を全否定することだと捉えていたことだ。極端な考え方で、思考の柔軟性がなく、白黒思考だ。母親を神格化し、同一化し、母子分離ができていない。描かれていないだけかもしれないが、ルミ子の父親の影の薄さも、母親の絶対視に繋がった可能性もある。夫や浮気相手に指摘されていたように世間知らずのお嬢様というのは的を射ている面もある。
そんな歪んだ考えを持つルミ子は、居候先の義母からいびられ、夫も庇ってくれないという過酷な状況となり、さらに追い込まれていく。

そんな無責任な清佳の父とは、絵画教室で出会った。夫の絵は暗く、嫌いだったが、母(大地真央)が生命の儚さを感じ、称賛する。初めて母親との同一化が崩れてしまう大切なシーンだった。
父はルミ子が義母からの執拗な虐めに遭っているのも、清佳がルミ子に叩かれているのもきづきながらも助けない。さらに浮気をしていた。父はまだ父になりきれておらず、清佳によると学生運動の時代から時を止めたまま、家庭からずっと逃げ続けているだけだ、と。学生運動に対する思いは人それぞれあったと思うが、清佳の考えでは、家庭で発散できない気持ちを何でもいいから外にぶつけて行ったもの、だから抽象的で、一貫性がない、とのこと。
浮気現場に乗り込む、清佳の行動力、正義感の強さ、賢さ、父親への指摘の辛辣さは高校生とは思えない笑

少し脱線して、高校生とは思えないといえば、清佳の同級生(後の清佳の夫)を思い出す。教室で親のことで揶揄われている同級生を助ける清佳。その時にかけた言葉が「〜はデリカシーがない、清佳は遊びがない」的確すぎる、、、

話を戻して、乗り込んだ浮気現場で、大地真央の自殺を聞かされる。罪悪感に苛まれる清佳は、ルミ子にそのことを告げる。このシーンが、ルミ子、清佳、それぞれの母子分離のキーとなる。
まずはルミ子。愛してると抱きしめる。ちょっとここは飛躍してる感じがあって、他の人の考察を見たり、原作を読みたいが、無性の愛を獲得したと捉えた。
次に清佳。母から首を絞められる。本当は抱きしめられいたのかもしれないが、心理的な息苦しさから、そう感じ取ってしまったのか?と思った。清佳としては、「母になら殺されてもいいと思ったが、それじゃいけないと思った。」といい、翌日首吊り自殺未遂。私は自我を確立し始めたシーンだと捉えた。その後の病院で目覚めるシーンで、私は清佳だと自覚しているので、尚更思った。

このように色んな出来事を乗り越え、気づきを得た清佳の一言で印象に残ってるのは、
「女には2つある、娘か母親か、ずっと娘の人もいる」
「母性って備わってるものではなく、学習して獲得していくものだと思うのです」

疑問点は4つ
①自殺を知った清佳に愛してると言った経緯
②大地真央は自殺までする必要はあったのか、とそこは若干疑問。確かに、ルミ子が助からない大地真央ばかりに気を取られて、なかなか清佳を助けようとしないから、1人でも多く生き残るために仕方なかったとは言える。けど、清佳を助けた後、私も助けてって言えばよかったのでは?
ルミ子の依存っぷりを知ってるからこそ、その可能性は限りなく低いと判断したのかな。
③清佳の首吊り後、懺悔の部屋で、祈りはさらけだすことです、と神父に言われた後、私が間違っていましたの目的語はなんだったのか。ルミ子は人に喜んでもらうためと口では言ってたが、本当は、人に愛されるためにしていた行動だったと気づいたということでいいのか?
④ルミ子は本当に無性の愛を獲得できたのか?妊娠がわかった時にかけた言葉は、心からなのか、ルミ子の母をトレースしたものなのか。作中で母性も学習と言ってるので、トレースでも、学習と言えるような気もするけど、、、 人によって個々の受け止め方は変わりそう。

最後はハッピーエンドでよかった。
りっちゃんと駆け落ちした旦那さんは、お金目当てではなく、2人で幸せにお店を経営しているようで安心した。

あと、母サイドと娘サイドどちらも描くのが、湊かなえ作品らしくて、さらに好きなポイントです!
原作読みたいー!!
みん

みん