話は面白いのだが、着地に失敗していると思う。
伊能忠敬の話を作るつもりが、忠敬は本当に地図を完成させたのかというミステリー。そちらに流れたので帰結が難しくなった。
現代劇と時代劇(劇中劇)の二部構成。
伊能忠敬の志を継いだ弟子達と中井貴一演じる天文学者が、重大な秘密を抱えながら成し遂げる苦労と、秘密露見のサスペンス。
劇中劇は大変面白い。
だが問題は、忠敬が主人公ではなくなってしまうことだ。
忠敬を慕う人々の団結を描いているのだから。
それでも彼らを突き動かしたのは忠敬への敬意であり、忠敬が陰の主人公にはなり得ている。
それは将軍謁見のシーンで感動的に昇華される。
そこで終われば良いが、話が現代劇に戻ってしまう。
するとやはり、陰の主人公では大河ドラマにならないというオチになる。
そこでの解決が蛇足気味なのだ。
本編のテーマと噛み合っていない気がする。
この映画は、第二の人生を描いてるわけではない。
不可能に挑戦する壮大な夢とロマンを描いている。
伊能忠敬だから50を越えての第二の人生は解るが、中井貴一はその事を悩んでいた訳ではないから、とってつけた感じになる。
そこが焦点ではないだろう。
人生は地図みたいなものだから、道に迷えば歩み直せば良い。
ということだろうが、それまで語っていた不可能への挑戦というテーマとはズレている気がする。
劇中劇でのエンディングが一番しっくりくる。
あそこで終わって、現代パートはナレーションで簡単に処理すれば良かったと思う。
蛇足への道。