長谷川

ダウントン・アビー/新たなる時代への長谷川のネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

注・めちゃくちゃ長文です。

ダウントン・アビー、ありがとう、ありがとう!ファンにとってこの上ない続篇、そして最高の贈り物でした。
今作はもう、ファーストシーズンからリアタイしてきた身として、涙腺崩壊ポイントがあちこちに。

初っ端、トムとルーシーの結婚式、二人を祝福する懐かしい人々の顔を見ただけでもう目頭が……。
トム、本当に良かった。天国でシビルも喜んでるよね。

それにしても、前回から数年経ったとはいえ、皆さんの変化にもけっこう驚かされた。
いやだってファーストシーズンからもう13年。劇中では16年の歳月が流れていて、自分も含め、そりゃ歳もとるよねーと。
お子ちゃまたちもびっくりするくらい大きくなっていて、あらためて時の流れをしみじみと。

今回はダウントン・アビーで映画を撮るというストーリーで、映画のなかで映画撮影を見せるという入れ子構造な物語にニヤリとさせられる。
時代はサイレントからトーキーへ移る過渡期で、一時期サイレントにハマっていた自分としてはめちゃくちゃ楽しめた。

舞台となった南仏の別荘も素敵で、ロケ地のことをネットで調べていたらかつては廃墟になっていたのだそう。
女性陣のファッションは相変わらず眼福もの。特にイーディスは都会のキャリアウーマンらしく、センスの良さが光る着こなしが多い。


でもこのドラマは外側の綺麗さばかりではなく、夫婦や親子、同僚、主従の絆を描いていて、そこが一番の魅力となっている。
トムとヴァイオレットの会話、イザベルとヴァイオレットの会話に涙腺が緩みっぱなし。いやほんと、いろいろあったもんね。
ヴァイオレットとイザベルのコンビが大好きだったので(マートン卿を救出するエピソード良かった)、もうこの二人の掛け合いが見られないのかと思うと悲しい。

アンディとデイジー、メイソンさんも収まるべきところに収まってなにより。
ウィリアムが望んでいた幸せって、きっとこうだったんだなと思うとまたセカンドシーズンから見直したくなったり。

そしてバローさん。まさかダウントンを去ることになるとは。ファーストシーズンからのある意味《顔》であるトーマスが去って、ああ本当に終わりなんだなあと。
今度こそアメリカで幸せになってくれ。

モールズリーさん、今回も意外な活躍で一番美味しかったのではないだろうか。隠れた才能を花開かせ、長年の夢が叶ってバクスターさんに念願のプロポーズ。このシチュエーションもなんとも粋で、彼のこれまでを思うと感慨深い。

そしてロバートとコーラ。病を打ち明けたコーラに「君は私の全てなんだ」と泣いたロバートにこっちももらい泣き。
シビル亡き後、夫婦の危機を乗り越えた二人だからこそ、グッとくるものがあるよね。あとコーラさんの「あなたは全然フランス人らしくない、ニンニクも嫌いで」のくだりが好き。ヴァイオレットのユーモアのセンス、まちがいなくコーラさんも吸収していると思う。

女優のマーナ。初めはヒール役全開で嫌いだったのに、スペイン風邪の話で全てが変わってしまった。スペイン風邪といえばラビニアのエピソードも好きだったな。

このドラマけっこうバタバタ人が死ぬんだけど、なんかその《いまは亡き人々》の想いがいまのダウントンに息づいている、そんなことも感じられる脚本だった。
マシューにラビニア、シビル、ウィリアム、そしてグレッグソン。
彼らの残した想いが今の人たちを生かしている。これからはその場所にヴァイオレットが加わって、残された人々へと受け継がれていくのかな。

女傑の死と新たな命の誕生、そして時代は1920年代から30年代へと。
タイタニック号の沈没に始まったドラマですが、これ以上ない素晴らしい締めくくりでした。そしてヴァイオレット役のマギー・スミスさん、吹き替えの一条みゆ希さん、本当にお疲れさまでした。

でも続編あるのかな。
映画はハッピーエンドで終わっているんだけど、ドイツでナチスの政権が誕生するのが四年後、そしてさらに六年後には第二次世界大戦が勃発するので、確実に戦争の足音は聞こえてるんですよね。
ダウントンがこの激動の時代をどう乗り切ったのか、知りたいような知りたくないような。

ジョージとか絶対従軍してるだろうし。ロンドンは空襲にあってるから、イーディスの雑誌社のことも気になるなあ。
長谷川

長谷川