MasaichiYaguchi

ムクウェゲ「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

4.0
アフリカ大陸コンゴで5万人もの女性を救い、2018年にノーベル平和賞を受賞した婦人科医デニ・ムクウェゲを追ったドキュメンタリーは、「女性にとって世界最悪の場所」と呼ばれるアフリカ大陸コンゴ民主共和国東部で、性暴力によって肉体的、精神的に傷ついた女性たちを20年以上にわたって無償で治療してきた婦人科医のデニ・ムクウェゲの活動を多角的に描いていく。
彼の病院には年間2500~3000人の女性たちが運ばれ、治療の日々は終わることがない。
何故このように女性に対する性暴力が、コンゴでは跳梁跋扈するのか?
その背景には、日本をはじめとした先進国が深く関わっていることを本作は浮き彫りにしていく。
それは、我々が日常的に利用しているスマートフォンをはじめとした電子機器に使用されているレアメタルや錫などの豊富な鉱物資源をコンゴが有しているから。
これらの鉱物資源の利権を巡り、コンゴに100もあるという武装勢力がレイプという卑劣な手段で人々を恐喝、恫喝して手中に収めようとし、それを抑止しなければならない政府は、犯人である武装勢力に対して「不処罰」を決めこんでいて、負の連鎖に歯止めがかからない。
その負の連鎖の構造に気付いたムクウェゲ医師は、根本的な問題の解決の為に、コンゴの地で女性たちの身に起きている悲劇と、その原因を世界に向けて発信し始める。
映画の終盤で印象的な日本の言葉が登場する。
それは、自分を犠牲にして他人のために尽くすことを意味する「利他」という言葉。
コンゴで起きていることは遠い国のことで、私達には関係ないと無視出来る時代では既にない。
本作を観てもらえば痛感すると思うが、我々が知らないだけで、コンゴと日本の関係は深く繋がっている。
「利他」という言葉を持つ国民として、もっと世界に関心を抱かなければと改めて思う。