EDDIE

スワン・ソングのEDDIEのレビュー・感想・評価

スワン・ソング(2021年製作の映画)
4.6
“目を見て愛してると言って”
こんなにも心に響く“I love you”があっただろうか。余命幾許もない主人公は妻子にある贈り物を企てる。
同じ姿、記憶の共有…いずれが可能でも課題が残る。ただ本作はそれを大きく乗り越えた。今年ベストエンディング。

またもやAppleTV+が傑作を生み出してしまいました…いや、ホントなんでこんなにハイクオリティな作品ばかり生み出せるのに全然宣伝しないのか。
AppleTV+ユーザーが身の回りに少なすぎて感想の共有すら難しいのはいかがなものでしょうか。

本作は『僕はうまく話せない』で第88回アカデミー賞短編実写賞を受賞したベンジャミン・クリアリー監督の長編デビュー作。
主演のマハーシャラ・アリはプロデューサーとしても本作に関わっています。

舞台は近未来、スマホからさらに発展して、ARで画面が目の前に飛び出してくるような端末が普及しています。いかにもAppleらしい作品といえるでしょう。
アリ演じる主人公のキャメロン・ターナーは不治の病に侵され、死の間際に立たされています。
しかし、愛する妻と子供には大切な人を喪失する苦しみを味わってほしくない。さらに妻のお腹には2人目の子供が。

そこでキャメロンはとある決断をします。
予告でも流れていますが、彼と瓜二つのクローンを残すことですね。
これが社会倫理的にどうだとか、様々な意見はあるかもしれませんが、今後もしかしたら可能になる技術と考えた時に、この作品はそこで直面する問題について追求しています。

一見地味に進行するストーリーでも、撮影の美しさや演技派俳優たちのレベルの高い表現によりついつい見入ってしまいます。
マハーシャラ・アリと妻役のナオミ・ハリスの初めての出逢いのシーン。ここはほぼ会話がないにも関わらず、2人の表情や細かい手の動きに魅せられ、これぞプロの名演という感覚を覚えます。

ほかに脇を固めるのがグレン・クローズやオークワフィナです。
これほどまでに安心感のある布陣を揃えてきたのは、作品のテーマ性や地味な進行にきちんとエンジンをかけるためだと確信させられます。

2021年の締めくくりに年間ベスト級の作品に出逢ってしまいました。
すでにもう一度観たいと思わされているほどで、ベンジャミン・クリアリー監督の今後にも益々期待がかかります。
前作はまだ観ていないので、こちらも是非チェックしようと思います。

※2021年新作映画199本目
※2021年自宅鑑賞243本目
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