井沢

ONE PIECE FILM REDの井沢のネタバレレビュー・内容・結末

ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

面白かった〜!


アイドルには詳しくないしライブも行かないから今回の映画は新鮮だった。
個人的にライブって日帰り楽園ツアーっぽいなと思った。ライブとかあまり行ったことのない人間の雑な所感ですが
仏教における極楽浄土とかキリスト教における天国とか 日頃の苦しみを忘れさせてくれる幸せの時間。でもそれは永遠じゃない
永遠じゃないから生きるモチベーションになる そんな感じなのかな

映画の本題とは趣旨がずれているかもしれないけど、
辛いことも嫌なこともない幸せな世界で生きる選択肢が用意されたとして、それでも現実に戻って生きていくことを選ぼうとした人たちは、なにを思ってそう決断したのか、個人的に気になった。

夢の中ではウタはなんでもできる。たくさんのご馳走も、花火も、武器も取り出すことができる。傷を治すこともできる。
ウタワールドに誘われた人達は、憧れのシンガーの歌を楽しんで、普段の生活を忘れることができる。
ウタのライブに喜んで参加したのに、ウタの歌だけ聴いていられる生活を望んだのに、現実の世界に戻りたいという声があがったのはなぜだろう。

単純に、観客の視点でいえば1日(長くても数日)で終わると思っていたライブで、突然一生拘束されることになったら「帰りたい」という声があがるのも自然だと思う。それにウタの計画は、本人の経験不足から幸せの解像度が低かったことやネズキノコで精神的に不安定な状態にあったこともあって、失敗することはなんとなく予想できたことではあるんだけれど………

ぱっと思いつくのは、ウタのファンの人々がウタに望んでいたのは所謂推しの最高のパフォーマンスと可愛い笑顔であって、幸せにしてもらうことではなかったからとかかな

ワンピース世界で生きる人々にウタのパフォーマンスが愛されたのは、ウタが辛い現実の中で一瞬の夢を見せてくれる存在だったからじゃないかなと思う
ウタは、歌によって、苦しい人の心を救うヒーローだった
けれど、ウタだけに依存して今の苦しみから救われようとするほどウタのファンは弱い人ばかりではなかったのではないかな
(誰かに助けを求める人を一概に弱い人って括ってしまうのも乱暴な話ではあるけど)


現実では貧困がある。戦争がある。死がある。個人の力で避けることが難しい不条理がそこらへんにゴロゴロしてる上に世は大海賊時代なんだよね
(この世界線に生きてる方々は人生ハードモードすぎるよ………)
そんな中でも、自分の意思で、自分の責任で、自分の選択で生きていく。それがどんな人生でも、全ての行動には取捨選択があって、自分で判断していかなくちゃいけない。

だけど、ウタワールドはウタが作り出した世界で、それを受け入れた時点で自分の人生をウタ1人に委ねるようなもの。ウタ次第で崩壊する恐れのある不安定なもの 

それもあって、ウタにずっとここにいようと言われて反発する層がでたのかなと思った

言っても意味がないかもしれないけど、ウタが歌っているだけで幸せな気持ちにさせてもらえた人は大勢いただろうし、永続的な幸福を叶えようとしなくてもウタはみんなの心の救世主になれてたんじゃないかなと考えてしまう 
推しがいるだけで人生辛くても生きていこうと思える人間ってそこそこいると思うんですよね
ウタにはウタの孤独も覚悟もあったので途中で立ち止まれなかったのはわかる
でもおつらいよ………

ふわっとした記憶でふわっとした感想を書いてるから最後の部分はあまり覚えていないんだけど、ウタがいなくなったあとのファンの様子が気になるな 特に描写がなかったような気がする
ただウタの歌をもっと聴きたかった、素敵なパフォーマンスをもっと見ていたかった、生きて姿を見せてくれるだけで十分だったのに、大好きだったのに、って人はそれなりにいたんじゃないかなと思って悲しくなってしまった

ウタの生死は劇中では明確にはされてなかったけど、仮に生きていても公には死んだことになってそうだなと思う
ワンピース世界のウタのことが大好きだった人々は夢を見せてくれる歌姫が消えた後も現実を生きていかなきゃいけない
きっと今後別の大好きな何かを見つけたりするんだろうけど、ウタの音楽を聴くたびに歌姫を好きだったことを思い出すのかなと思いました
井沢

井沢