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メタモルフォーゼの縁側のざぼのネタバレレビュー・内容・結末

メタモルフォーゼの縁側(2022年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

「きれいな絵…」
キラキラしたものは何歳になっても突き刺さる。雪(宮本信子)は75歳にしてBL本に興味を持つ。最初は書店でたまたま見つけた漫画の表紙がきれいだったから。そのひょんなきっかけが、17歳書店員うらら(芦田愛菜)と結びつくことに…。

①みんな優しく清らか

優しさが皆からにじみ出ていて、ほっと落ち着ける心の拠り所となる。BLが自然と受け入れられる(最初は恥ずかしくて隠し通す路線かと思ったけど)し、性格が合わないと思っていた橋本英莉(汐谷友希)も「ちょっと興味あるかも」と本を購入していく。一方で彼女は海外留学のために目標に向けて一生懸命なのも推せる。幼馴染の紡(高橋恭平)はうららをずっと応援しているし、初めて制作した本を買ってくれたのは大きな支えとなる。

ダンボールで送られてきた画材道具に入っていたメッセージ「古いですが、使えると思います(のような言葉だったと思うが)」がなんかいい。

②自信をつけていくうらら

BL趣味を隠そうと挙動不審なあたりから、徐々に心を開いていく様に心打たれる。初めての雪との会話では人目を気にしてあまり話すことができない。喫茶店員には本を隠してしまう。そして英莉がBLを買って学校で友達と楽しそうに会話しているのを見て「わたしズルいって思ったんです。ズルいのはわたしなのに」と卑屈に。

しかし、昔は字が下手だった雪が漫画先生にファンレターを書こうと必死に練習して書道の先生になったとの話を受けて、その背中が後押しされる。漫画を描くことを決意する。
「これを本にして人に売るって、正気かわたし」「情けなくて…」「せめて次の最終回までは、勉強がんばります」
うららの成長と自信に満ちた顔になっていく様には、芦田さんの八面六臂の怪演を目の当たりにすることになる。

③年を感じさせない雪のかわいさ

作中作『君のことだけ見ていたい』の咲良と佑真。「この2人を頑張れ!って応援したくなるんですよ」の雪の明るい顔は生気溌溂としている。娘からのボケてんじゃないに対して、むしろ最近は晴れやかですよの受け答えもさすが。スマホでは絵文字使ったやりとりも見せるなどお茶目な面も。

漫画作者コメダ優(古川琴音)のサイン会に参加した時にも、コメダ優がうららの漫画を買ってくれたことを知りながらも、うららにはそのことを内緒にして、"サプライズ"しようと我慢するのがいじらしい。最後には二人で無邪気にはしゃぐのも、観ていて心が和む。

「この漫画のおかげで私達お友達になったんです」
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