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メタモルフォーゼの縁側のSPNminacoのレビュー・感想・評価

メタモルフォーゼの縁側(2022年製作の映画)
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75歳でBLと出会った雪さんとの出会いで、17歳うららの心にも風が吹き込む。なんと清々しいファンガールの交流よ。なかなか同好の士に出会えない自分には羨ましい。
まず雪さんが自分からBL漫画沼にハマり込んだところが良い。沼はいつどこにあるかわからない。恋と同じだ。劇中BL漫画の主人公カップルとシンクロするのはうららと幼馴染くんか?と思わせて、雪さんとの関係だったのが素晴らしい。そう、この2人もまたBL(buddy’s love)なのだ!
年老いて可能性が広がる雪さん、若いのに自虐的なうらら。雪さんは多少テレがあっても恥じたりしない、キラキラ眩しいほど屈託なく情熱を注ぎ込むファンの鑑だ。雪さんの真っ直ぐな「好き」を通して、うららは自分のウジウジした卑屈さと向き合うことになる。これってつまり、狭い世界で細かい違いに拘ってお互いに壁を作ってしまうファンダムへの自己批評であって、健全なファンダムを楽しもうという話でもある。更に、それが作家とファンの良き関係を築く…(かなり単純化されてるけど)。
暗い段ボール箱を飛び出して、ただただ風通しの良い理想のファン人生がここにある。ファン同士が実際あんな風にキラキラした会話だけで満足するかしらん…とか、時々オーバーアクトなのが気になったけど、辛気臭いエピソード(例えば雪さんが病気になるとか)を挟むことなく、健やかな開放感が貫かれてた。うららの描く漫画が決して巧くはないけど少しずつ進歩してるのもいい。描いてるとき音楽聴かないの?と思ったが、考えてみれば狭い家で母親に聞こえてしまうのが心配だし、ヘッドフォンだと急に部屋に踏み込まれたら気付けないし…と納得。芦田愛菜はエンディングの歌が一番上手かったな。
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