マインド亀

ハケンアニメ!のマインド亀のレビュー・感想・評価

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
3.0
●昨年、あまりに評判が高くて、観よう観ようと思っている内に観れなくなってしまい、先日Netflixにて配信されたので早速観てみました!やはり、評判通り、お仕事映画として熱い映画でした。ですが、私にとってはちょっと若干の微妙さの入る映画でして、この映画を大変推してらっしゃる方々には大変申し訳無い思いもありつつ、自分の中で何がモヤるかを整理して後述します。

●舞台は、夕方にアニメが裏表で放送されるとても幸せな時代の物語。配信ではなく円盤の売上と視聴率がハケンを握る主要な数字となっているため、コロナ前なのは確実です。その時代設定は、若干一昔前なんだと思って別に納得しているから良いです。そういう時代から、あっという間に色々な価値観が変わってしまいましたね。リアタイ視聴に重きを置く良い時代でした。

●ひねくれ者の私の鑑賞方法が悪かったと思うのですが、評判が非常に良過ぎたので、「良いやん!」と「そこまでか?」と「いや今のはいらないのでは?」という気持ちの揺れにめちゃくちゃ左右されながら観てしまいました。そのためストレートに観られなかったのかもしれません。

●良かったところは、お仕事映画として、ライバルの苦悩もしっかり描けていること。天才肌の監督像は若干テンプレ的ではありますが足の引っ張り合いではなく正々堂々と勝負していること。また、チーフプロデューサーも実は色々な思い思ったいいヤツだったことです。観ていて嫌な気分にはならなかったのは良いです。

●また、現実の人気声優に対して、「見た目、人気重視で実力もない」とバッサリ言い切ってしまうのはすごいと思いました。いくら後半結果的に良い役に転じていくとはいえ、よくこの声優役を現実の人気声優が引き受けました。心意気良しです。

●あと、アニメのクオリティが非常に高いです。ちょっと観てみたいと思いました。若干「二番煎じ感が否めない」と作品中で言われるように、エヴァ後の作品であるというのがはっきり分かって面白かったです。

●キャラデザも青春時代のバイブルである、「ツルモク独身寮」の窪之内英策で、このキャラがバリバリ動くのは感動です。また、ライバル側のアニメの最終回も、結果的に「殺さない」という選択肢をもって、メタ的な表現で観客を裏切りながら成功に導いたのも良かったです。

●ここから私が処理しきれていない若干モヤる部分を書いていきます。申し訳ないです。

●まず、主人公がアニメの最終回は王道を選ばない、それはとても良いことだと思います。当然そのほうがアニメは面白くなっていると思います。ですがこの映画自体はとてもとても王道過ぎます。なんというかわかりやすい。わかりやすすぎるのです。それの何が悪いかはうまく表現できませんが、なぜかモヤるのです。

●周囲の人々が主人公を信頼していくきっかけは、主人公が周囲の人々を信頼し、それぞれに伝わる方法で仕事を伝達していくからだと思うのですが、最終回のエンディングを変えると伝える時点では、スタッフが主人公を信頼するに足るきっかけが(声優以外には)あまり伝わりませんでした。なので王道エンディングに向かうための強引さを若干感じてしまいました。

●また、主人公のモチベーションにつなげるために、いじめられている近所の子供を出す部分は、正直好きになれませんでした。物語としてはわかりやすいのですが、安易に可哀想な子供をモチベーションのトリガーにする部分は、正直「いるか?」と思ってしまいました。その部分でストーリーはモタついているような気がします。また、イジメというのは簡単に解決するものでもないですから、いじめられっ子が簡単にいじめっ子たちに受け入れられていくのも安直すぎて、話の展開のための装置として使われるのは、私はやはりモヤッてしまうのです。もう少しうまい方法はなかったのかなあと思いました。

●また、主人公やライバルのチーフプロデューサーの心の拠り所となる「光のヨスガ」という作品ですが、これもあくまで「なんか普通の魔法少女アニメとは違うらしい」というだけで何がどう響く作品なのかが私と共有されないので、二人のモチベーションに共感しづらかったです。

●ライバルの中村倫也も好演でした。が、とってつけたようにチーフプロデューサーに対する思いが、最終的に恋愛感情を匂わす感じになっていくのが私的には少々残念でありました。もったいなかったな、と。仕事仲間の男女のハッピーエンドとして向かう先は恋愛成就、というのはいささか昔の王道なのかなぁと思います。これならチーフプロデューサーを、男にしてバディとして仕事の成功をハッピーエンドにしてくれたほうが気持ちよかった気がします。話は変わって、主人公の肩に手を置きまくる製作デスクに対して主人公が啖呵を切る下りは気持ちよかったです。一見味方を装ってますが、所詮は女性を下に見ているこういうキャラはどこにでもいるものです。無意識な悪意に対してはっきりとノーを突きつける部分が良かっただけに、ライバル達の恋愛がハッピーエンドっぽくされているのも何かチグハグな気がしました。
※追記
神作画の女の子も、結局幸せの向かう先が恋愛だったので、それもモヤりましたね。
恋愛描写の全てがだめとは言いませんが、蛇足な感じも否めません

●あと、エンドロール最後のシーン、これもあまり好きではありませんでした。●●では負けたが、●●では勝った、というのは蛇足感を感じました。強大なライバルには負けてもそれが成長の糧になって次の新天地ではめちゃくちゃ成功している、というようなシーンのほうがいいかなあと思います。ファーストスラムダンクで山王の監督もいってました。「「負けたことがある」というのがいつか大きな財産になる」と。

●いろいろ書きましたが、それでも熱い映画であることは変わりません。同じようなクリエイター映画である「バクマン。」はすこし強引に王道に持っていった感がありましたが、この作品はもっと丁寧さを感じました。ちょっと私がひねくれた部分もありますので、お許しください。

●あ、最後に!ちょっとよく分からなくって教えてほしいのですが、あのエクレア、なぜイチゴ?イチゴが食べたかった?なぜイチゴを選んだ?わかる人教えてください!
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