るるびっち

RRRのるるびっちのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.6
「ニンニクマシマシ、野菜、アブラマシマシ」
胃もたれしそうだが、意外とさっぱりで幾らでもいけちゃう。
むしろ、もっともっとと中毒性がある。
『ラーメン二郎』の話ではなく、 ラージャマウリ映画の話である。

ただでさえ暑苦しい、髭ダルマのヒーローがダブルで登場。
ニンニクマシマシ過ぎるやろ!!

その二人が少年救出に、空中ブランコのように一本のロープでぶら下がり互いに手を結ぶ。
この時、川辺は火の海。救出される少年がインドを表しているなら、正に「火」と「水」の二人の男がインドを救出する事を画で示している。
国旗もちゃんと持ってるし。

評論家の町山智浩氏が老害か認知症か、本作を「鞭打たれる男が歌いだすトンデモ映画」のように言っている。
だったらブルース・リーは「奇声を発して暴れるだけ」の映画か?
そんな訳ないだろう、そんな上っ面ではブルース・リーの本質を1ミリも語っていないじゃないか。そんな老害評論するならやめちまえ。

確かに表面的には鞭打たれて歌うのだが、それは決して圧政に屈しない不屈の歌であり、その魂が歌を通じて民衆の心を奮い立たせるのだ。武器も持たずに一斉蜂起する、奇蹟を呼び込む祈りの歌であろう。
ブルース・リーの怪鳥音が、アクションの新機軸を呼び込んだのと同じである。

橋の救出でわかるように過剰な演出・映像美なのだが、この過剰演出が人々の思考力を奪い、認知を麻痺させていく。

『宇宙鉄人キョーダイン』で弟グランゼルが車になり、ミサイルになった兄スカイゼルを乗せて走り回ったように、兄弟以上の絆を持つ二人が合体して暴れまわる。
このとき観客は、驚き・笑い・何故か涙という三点セットを体感する。
何でも、こってりマシマシなのだ。

合体に驚き、そんなバカなと笑う。
しかしそれこそが兄弟愛を越える二人の熱い絆を映像として具現化したものであると解り、その過剰でストレートな表現に涙する。
何故なら、観客はそこに至るまでの二人の男の友情の軌跡を知っているからだ。
目と目が一瞬合っただけで意気投合するほどの言葉を超えた友情にも関わらず、敵対する関係から裏切りと憎しみを経た末の絆と愛なので、ただ驚いて笑うのではなく、涙してしまうのだ。

これはブラックホールによって光が歪められたのに等しい。
大きすぎる重力で光が歪むように、過剰すぎる演出と映像で観客の認知が歪み、本来驚いて笑うべきところを何故か泣いてしまう。
感情と認知のブラックホール現象が起きているのだろう。
それは光を捻じ曲げる如く、過剰で強烈な重力を持つ演出力と映像力のなせる技なのだ。しかも中毒性が高い!!
この異常な映像演出力が、こってりマシマシ・ラージャマウリ神話である。
主人公だけではなく監督も神話になっている。正にRRRのひとつ。
言っておくが、ラーメンの話ではない映画の話である。
るるびっち

るるびっち