どらどら

百花のどらどらのレビュー・感想・評価

百花(2022年製作の映画)
4.2
- なんで忘れてんだよ、こっちは忘れらんねえんだよ

記憶と人生の非対称性について
「忘れる」という罪と「忘れない」という贖罪について

我々はたとえ人生の一部を共有していても
それぞれの角度でしか見えておらず
何を覚えているのかも
そして何を忘れるかも
全く違う
親子でも夫婦でも恋人でも
そこには乗り越えられない壁がある

忘れたいこと
忘れられないこと
忘れたこと

「半分の花火」
半分しか見えていないから美しく
そして忘れられない
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川村元気長編デビュー作
菅田将暉、長澤まさみ、原田美枝子の競演
挑戦的なロングショットの連続
抑制された演出と劇伴
記憶をアシンメトリックなものとして捉え直す、そして認知症の「忘れる」という側面を相対化/無効化さえしようとする試み
認知症を取り扱った傑作が数ある中この映画が今作られ、新たな角度を提示していることはとても面白いと思う

母の「罪」自体は最後まで相対化されないし、「忘れる」という側面から逃れたわけではない
それでも、この映画は1人の人間としての母に赦しを与え、「忘れる」という悲劇を相対化した
湖/海という序盤のバスでのすれ違いが、これほどの意味を持っていようとは、

あらゆる意味で挑戦的なテーマを扱って、この規模感で挑戦的なショットを連発し、一本の映画にまとめた川村元気の力量とスポンサー陣の度量にあっぱれ

ある意味で「普通」の演技ができる菅田もさることながら、さまざまな顔/年齢を見事に演じ分けた原田美枝子の力量に圧倒された

ただKOEのエピソードは説明的すぎてクエスチョンマーク。岡山天音の気だるそうな話し方によりまだマシだけど。
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