2000年代後半~10年代前半には『REC/レック』や『クローバーフィールド』等の影響もあり、数多のPOV映画が粗製乱造された。
それから時を経て2021年に制作された本作は、POV視点のシーンとそうでないシーンが入り混じっている。つまり、このジャンルの特長であるはずのリアリティは放棄する代わりに物語の緩急を付けるために演出を切り替えているということ。
この演出技法はある程度功を制しており、街中が舞台となる序盤は穏やかな音楽を流して主観視点も少な目にし、海中に入ってからは一気に不穏さを強調することである程度マンネリを回避することに成功してはいる。
とはいえ登場人物がほぼ2人しかいないこともあってか、恐怖演出はアトラクションのように単発で舞台が水中なために動きも少ない。
死んでいるはずの人間が襲ってくるシーンではクラシックホラーのように数人がゆっくりと近づいてくるだけで、このジャンルの限界を見てしまった気がした。
過去の同ジャンルの名作を焼き直しながら工夫を凝らしたとして、どうしても実在感を出すためにドラマ部分が犠牲になってしまう。この映画はその悪い実例以上のものを提供してはくれない……。
Bye...