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こころの通訳者たち~what a wonderful world~のakiakaneのレビュー・感想・評価

3.9
日本唯一のユニバーサルシアター『CINEMA Chupki TABATA』の代表平塚千穂子が、ドキュメンタリー映画『ようこそ 舞台手話通訳の世界へ』の視覚障害者向け音声ガイドを作るまでを描く。(劇中演劇は舞台手話通訳付き『凛然グッドバイ』)

本作のタイトルだけ見て「また心とか絆とか感動とか奇跡とかふわっと良い感じに使うやつ…?」と地上波テレビの障害者出演の感動ポルノものに拗らせた自分を助走をつけて殴りたい。
音声ガイドの作り方を知る貴重な作品でもあるが、特に重要なのは視覚・聴覚障害の当事者や舞台手話通訳者の声が聞けること。
「盲者は“健常者の目の見えなくなった人”じゃなく、感じ方が違う人なんだよ」
「目を閉じて『これが視覚障害者の世界です』…ってちげーし!」
「視線も表情も手話の一部、ただ手話を単語で訳せば良いものではないと思う」
「手話には差別されながら苦労して言語として認められてきた歴史がある」

どうやれば伝わるのか、分かるのか多くの人が話し合い考え工夫しながら懸命に伝えようとする思いの強さと人の声に宿る温度と力を感じる作品。

《余談》
Q.「(舞台挨拶にて質問)映画館を作りたい、と思った動機は作中で分かったがユニバーサルシアターにした動機は何だったのか」
A.チャップリンのサイレント映画『街の灯』を目の見えない人々と一緒に観る上映会の企画に参加したことがきっかけで20年以上視覚障害者と共に映画を楽しむ環境づくりをしてきた。そこで、どうせ自分が映画館を作るならみんな楽しめるように、と思った」

2023年2月23日放送TBSラジオ「荻上チキsession」特集でも聴者の手話が聾者のための手話になっているか、日本手話と日本語対応手話の違いなど現実の課題が詳しく語られている。(↓書き起こし記事)
https://www.tbsradio.jp/articles/66479/

2022年12月28日放送 TBSラジオ「アフター6ジャンクション」の日比麻音子アナウンサーベスト作品。
※映画館『シネマチュプキタバタ』の壁にサインあり
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