ろく

階段の先には踊り場があるのろくのレビュー・感想・評価

階段の先には踊り場がある(2022年製作の映画)
3.6
今泉、濱口監督のエピゴーネンと言ってもいいかもしれない。

いや、そこまで悪くはないんだ。感情の入らない会話劇、そしてすれ違う気持ち(相手の気持ちなんか理解できない/してやらない)、長回しのカット、最後近くでのロングトーク。ああここにあるのは今泉・濱口が常套的に使うテクニカルの数々。それはいままで(少なくとも2000年代まで)邦画ではなかったテクニカルだと思うし、それを自分も「面白い」と言って追って行った。

だから悪くないんだ。最後なんか無駄に感動してしまったし、会話の処処にクスクス笑ってしまった。またこんな会話劇なのにしっかりとトリッキーな展開も仕掛けてくる。面白い。そして心地いい。

でもねえ……

長いんだよ。これはまだ2時間強だけどこのような内容なら70分で撮れるはずなんだ(長くても90分だろ)。なのに長い。この監督の前作なんか3時間強である。それって濱口の「ドライブ・マイ・カー」や「ハッピー・アワー」と同じじゃないか。

いや監督は無駄なシーンはないって言い張るかもしれない。そもそも長い映画を「見ることのできる」人に対し映画を撮っているんだと。見ることが出来る、つまり「わかる人」にだけ映画を撮っているんだよ、そういっている気がするんだ(それは濱口作品も同様だけどね。僕は濱口の作品、とくに「ドライブ・マイ・カー」はそこまで評価していない。言うなれば小賢しいんだ)。

この映画もその小賢しさが鼻に突く。どうにもそわそわ(まあ映画館の椅子が悪かったので余計そう思ったのかもしれない。すまん)。ダウンタウンが出てきたことによって「お笑いをわかるやつとわからない奴」に観客を選別するようになったと言ったのは誰だったっけ。その言葉を借りるならこの映画は「映画をわかるやつとわからない奴」に選別する。それって結構鼻持ちならないんじゃないのなーんて思ってしまった。

僕が同じようなラインなのに城定の作品が好きな理由はその「短さ」にあるのかもしれない。
ろく

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